薮下研究室

＜問題＞
子供のころに、本を読んで感動したり、わくわくしたりした思い出は、一生消えることのないほど強烈なものである。子供は未知の世界に対して新鮮な好奇心を持ち、想像力が豊かであるため、本の世界の中で生きることができるのだ。成長してさまざまな試練に出会ったときに、そのような経験が思わぬ力を発揮する場合がある。
京都大学２００８年度・(1)

＜答案＞
The memory of being inspired and excited by reading books in your childhood is so sensational that it will continue to stay in mind.  Children are curious about unknown territory and have great imagination, so they can live in the world of books.  When they grow up and encounter a lot off difficulties, such an experience gives them unexpected abilities.

＜読者への挑戦＞
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。

＜添削＞
２．sensationalは「扇情的な」の意味
sensationの原義はsense(知覚)に訴えることです。良い意味なら「すばらしい」とか「驚くべき」になります。また、場合によってはsenses(官能)に訴えることもあるので、「扇情的な」とか「官能的な」というエッチな意味にもなります。ここでは、中学生なら「強烈な」をどう表現するかと考えて、strongにするのが良いでしょう。
⊿その思い出はとても強烈だった。
The memory is so strong.

 ３．「豊かな想像力」は可算名詞
imaginationを使うときはちょっと注意が必要です。「想像力」は目に見えませんから、普通なら不可算名詞です。こんな具合に使います。
⊿彼女には想像力がある。
She has imagination.

でも、「豊かな想像力」になると、具体性が強くなるので数えられるのです。こんな具体です。
⊿彼女には豊かな想像力がある。
She has a great imagination.

子供達は複数形ですから、imaginationsにしてやる必要があります。
⊿子供は想像力が豊かである。
Children have great imaginations.

名詞の可算、不可算は本当に厄介です。日本語は数にいい加減ですから、僕らにとって英語の数の考え方は良く分からないところがあります。appleも、いつもの具体的な丸い形なら数えますが、アップルパイにするのにバラバラにしたら数えません。「薮研」のここやそこ、あそこで復習しておいてください。

「本の世界の中で生きる」について赤本はこう書いてます。
◆日本語自体が曖昧なので工夫したい。「その物語が創り出す世界」ならthe world (that) the story createsとなる。「生きる」も曖昧なので、「それが実際の世界であるかのように本を読む」とした。いずれもas if＋仮定法過去などを用いる必要がある。

いいえ！仮定法なんて使う必要はありません！乾君がやったlive in the world of booksは、十分に言いたいことが伝わる良い英語です。先生の中には、前後の文脈から推測して、問題文を完全に書き換えないと気が済まない人がいますが、いつもそんなことをする必要はありません。赤本がその失敗例ですね。「心の琴線に触れる」とか「お茶を濁す」なんかは日本語独特の表現ですから、「感銘を受ける」とか「ごまかす」と言い換える必要があります。でも、「本の世界の中で生きる」くらいの表現は、英語でもそう言います。そんなに大仰に構えなくても大丈夫ですよ。
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