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渋木君からの質問

<質問>
次の英文は2010年度の京都大学の長文Ⅰの下線部です。
As anyone who has ever been in a verbal disagreement can confirm, people tend to give elaborate justifications for their decisions, which we have every reason to believe are nothing more than rationalization after the event.  To prove such people wrong, though, is an entirely different matter: who are you to say what my reasons are?
赤本の正解はこうなってます。
口論を経験したことのある人ならだれでも認めることだが、人は自分が決めたことを言葉を尽くして正当化する傾向がある。とはいえ、その正当化は、事が起こった後で理屈付けしたものにすぎないと考えるだけの根拠が十分にあるのだが。しかしながら、その様な人々が間違っていると証明することはまったく別の問題である。私の根拠についてなんだかんだ言うとはいったい何様のつもりだ、と彼らは言うだろうから。
僕には、赤本がやっている関係代名詞whichの非制限用法の訳が気に入りません。なぜなら、「僕らは自分が決めたことをなんとかして正当化する傾向がある」ことと、「その正当化が事後的な理由付けに過ぎないと思わせるもっともな理由がある」ことの間にあるのは、逆接関係ではなくて順接関係だと思うからです。だから、下線部の和訳は「そして、その正当化が事後的な理由付けに過ぎないと思わせるもっともな理由が僕らにはある」じゃないのでしょうか。分かりやすく説明してください。
<回答>
渋木君!なかなか鋭い質問です。これは君の言うとおりで、関係詞の非制限用法に下線が引かれていると、出題者は次のことを期待しています。これについては以前ここでも説明しましたね。
①コンマのところで文を区切る。
②and、but、becauseで文をつなげでる。
③先行詞を主語にして2つ目の文を始める。
そして、文脈からも「僕らには自分が決めたことを正当化する傾向がある。」そして、「その正当化が理由の後付に過ぎないと思わせることがある。」しかし「そんなことをする人は間違っているということを証明するのは、また別の問題だ。」の論理展開であることは明白です。だから、その意味では、赤本の訳語は間違っています。渋木君がやったように和訳する方が、採点官は◎を付けやすいと思います。ここまでが渋木君の質問に対する薮下の解説です。
さて、日本の入試英語は、「その子の英語の実力」ではなくて「その子の英語に対する真面目さ」を見極めるのが目的です。言い換えると、大学入試は、関係詞の非制限用法が出てきたら、ちゃんと①~③の手続きを踏んで和訳ができるかどうかを試しているのです。でも、これはあくまでも採点官に「英語に対する真面目さ」をアピールするための便宜的な手続きに過ぎません。もし文の接続をはっきりさせたいのであれば、初めから英語でこう書けばよいのです。
As anyone who has ever been in a verbal disagreement can confirm, people tend to give elaborate justifications for their decisions. And we have every reason to believe that they are nothing more than rationalization after the event.
著者がそうせずに「, which」にしているのは、著者本人がandでもbutでもbecauseでも何でも良かったということです。著者はただjustificationsのオマケの飾りを「, which」から始めたかったわけです。だから薮下は、入試じゃなければ、赤本の訳語でも別にかまわないと思います。
こういう「正解」を期待する入試システムを、ノーベル物理学賞を受賞した中村教授は「超難関のウルトラクイズみたいな大学受験システム」と言ってます。これは全く彼の言う通りで、このやり方では期待される「正解」やそれにたどり着くための方法を記憶している子が評価されるのだから、ゼロから何か新しいものを生み出すような子は出てきません。中村教授に言わせると、こんな入試システムは「つまらない人間をつくりだす元凶」なわけです。そして、1つの問いに複数の「正解」があると採点なんて不可能なわけで、期待される「正解」を書かせることでしか成り立たないような入試制度なら廃止しろと彼は言っているわけです。
まだ風邪が治りません。これで4週目に突入です。なんでも細菌性の風邪は、それをやっつけるための抗生物質が合わないとダメみたいです。今日から中間テストの採点も始まります。ブログはしばらくお休みです。

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