薮下研究室

＜問題＞
次の日本語は、龍安寺のパンフレット冒頭の「はじめに」の一部分です。下線部を英訳しなさい。

江戸時代には幕府の庇護のもと、境内に２０を超える塔頭寺院がありましたが、寛政９年（１７９７）の火災で方丈、仏殿などの主要伽藍が焼失したため、塔頭の西源院の方丈を移築して龍安寺の方丈（本堂）とし、現在にいたっています。
その後、明治時代初期の廃仏毀釈によって衰退しますが、英国のエリザベス女王が昭和50年（1975）に龍安寺を拝観したことが海外のマスコミで報道され、世界的にも知られるようになりました。

そして平成６年（１９９４年）、石庭及び境内全域が「古都京都の文化財」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
緑に恵まれた龍安寺は、四季折々異なる風景で皆様をお迎えします。境内での思い出を振り返りながら、自然と歴史豊かな表情をご覧ください。
notes
廃仏毀釈＝the anti-Buddhist movement

＜答案＞
Afterward, this temple lost its prosperity when the anti-Buddhist movement occurred in hte beginning of Meiji Era.  However, in 1975, visit by Queen Elizabeth was reported to all over the world and the temple came to be globally famous.

＜読者への挑戦＞
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。

＜添削＞
皆で一緒に考えた英語が、龍安寺の英語のパンフレットになる企画の５回目です。今回は、年表じゃなくて、パンフレット冒頭の「はじめに」の英訳を考えます。挑戦してくれたのはＨの吉田君です。彼はこの問題を手にしてすぐに英作にとりかかり、辞書も引かずにあっという間に仕上げてしまいました。それも、発音記号の読み方の授業を聞きながらですから、大したものです。

さて、添削のポイントは、「特定の時代にはthe」、「可算名詞を無冠詞・単数形で放置しない」、「all over the worldは副詞」の３つです。

１．特定の時代にはtheを付ける
僕ら日本人が冠詞のtheを使いこなすのは難しいことです。なぜなら、日本語には冠詞がないからね。あ、「お料理」とか「お名前」の「お」が日本語の冠詞だと言う人もいますが、これはただの丁寧語です。

theはthatが変形してできたもので、「あの～」とか「その～」が基本です。だから、その言葉が特定の１つのものを指していて、その言葉を聞くと皆んなの頭の中に共通する内容が浮かんでくるような場合に、冠詞のtheを付けます。「明治時代」という言葉も、色んな時代の中から１つの時代を特定して言っており、「明治時代」と聞くとみんなに共通する認識があります。あ、もちろん明治時代を勉強したことのない子は別ですがね。
⊿戦国時代は、多くの戦いに彩られた時代だった。
The Sengoku period is a time in which there were many wars.

たとえば「戦国時代」というのは特定の時代を指すのでtheが必要です。でも後半は、それがたくさんの時代の中の１つだと言っているのでa timeになってます。

問題文中の「明治時代」も同じで、これも特定の時代を指しているのでthe Meiji periodとtheが必要です。あ、それから「時代」の言い方にはperiodとeraの２つかあります。
⊿明治時代
the Meiji Period [Era]
＝the Meiji period [era]

このように、「時代」は大文字で表記しても、小文字で書いてもOKです。でも、薮下はよく使う「平安」とか「江戸」、「明治」とか「大正」はperiod、普段はあまり耳にしない「慶長」とか「寛永」などの元号はeraを使います。本当は、外国人に対して「元号」を使っても意味がないので、西暦で表現するのが良いと思います。ま、これはスタイルの問題で、好みとかこだわりですから、どちらを使っても間違いではありません。ですから、パンフレットの英訳はこうしました。
⊿その後、（龍安寺は）明治時代初期の廃仏毀釈によって衰退した。
Later, Ryoan-ji declined as a result of the anti-Buddhist movement at the beginning of the Meiji period

残り２つのポイントは次回にします。
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