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卒業生の諸戸先輩からの質問

<質問>
 先生、少し前に首を痛めたと読みましたが、大事ないでしょうか?どうぞご自愛ください。
といいつつ、表題に関係ありませんが質問させてください。
西きょうじ先生『ポレポレ英文読解プロセス50』p.37 例題14より
I feel that the teacher’s role is more fundamental than critic’s. It comes down ultimately, I think, to the fact that his first obligation is to the truth of the subject he is teaching, and that for the reading of literature ever to become a habit and a pleasure, it must first be a discipline.
という文についてです。
質問の内容というのは、2文目の文頭にあるit (It comes down toのit)が何を指しているのかです。
 著者の西きょうじ先生は、これをthe teacher’s roleとしているのですが、私は1文目のthat節であると考えております。根拠は以下の通りです。
1)文の論理展開として、1文目は抽象文でtopic sentenceにあたり、2文目のsupporting sentenceでは、it comes down toとあるように、1文目の根拠を示す文と考えます。(come down to≓be because of)また、1文目ではI feelとし、2文目ではI thinkと挿入していることから、1文目のfeelの目的節の信憑性への付け足し(根拠の添加)と考えます。よって、2文目の主題(主語)たるべきはthat以下である。
2)Longman Dictionary of Comtemporary English (5th Edition)によると、
come down to ・・・ if a complicated situation or problem comes down to something, that is the single most important thingとあることから、主語に置くべきは”a complicated situation or problem”であるのが望ましいと考えます。その上で単一の抽象名詞であるthe teacher’s roleが主語となるのは不適と捉えます。
以上2点から、itの内容は1文目のthat節だと考えております。
また、1文目のthat節で考えた際には、2文目the fact that his first obligation is・・・のhisの引用元が教師と批評家の二通り考えられるのではないかという指摘も考えられますが、
 1文目that内では比較級が使われており、focusは教師にかかっているので、指示語の引用はこちらが優先され、曖昧性は生まれないと考えております。
どちらも意味的な解釈の面では大きな違いは生まれないのですが、上級大学を目指す学生が論文を始め難解・複雑な文を読む際にはこういった細部の追求が、読解力向上の手順として重要なのではないかと考えてご質問に至った次第です。
大変お忙しいところと存じ上げますが、お手のあいた時にお答えいただければと思っております。
よろしくお願いします。
<回答>
諸戸先輩!ソファで変な姿勢で寝ていたら、寝違えてしまいました。そこでちゃんと手当をしていたら良かったのですが、筋トレやらストレッチングをやっていたら、椎間板が飛び出してきました。結局、中度のヘルニアで、右腕がしびれています。痛み止めを飲んでいるので、痛いというよりも重たい感じがします。でも、その副作用で猛烈に眠たい!最近では、黒板に字を書きながら眠ってます。
さて、ご質問のitの内容ですが、これはただの形式主語です。It comes down to the fact that文は、ほとんどIt is a fact that文と同じ意味で、「[文]というのは事実である」の意味です。こんな具合です。
映画を効果的に見せる工夫はいくらでもできるけど、映画は結局はストーリーだよね。
You can dress it up, but it comes down to the fact that a movie is only as good as its script.
=You can dress it up, but it is a fact that a movie is only as good as its script.
=You can dress it up, but a movie is only as good as its script.
一番上のは映画監督のCurtis Hanson の言葉ですが、3つとも同じ意味で使えます。そして、it comes down to the fact thatを消してしまっても、意味が全く変わらないことが分かります。だから、「映画はストーリで決まるのは事実だ」=「映画はストーリで決まる」なわけです。
諸戸先輩の推論は正鵠を射ています。最初の文のI feelと2つ目の文のI thinkは、2つの文が同格関係にあるとを暗示しています。そして、英語が「左で書いたことを右で説明する」展開、言い換えると「抽象→具体」の展開であることを考えても、やっぱりこの2文は同格関係にあると考えるのが自然です。
実際に、その内容を考えても、諸戸先輩の言うとおりで、「教師の役割は批評家よりも基礎的な部分を担う」と抽象的に言っておいて、「教師の役割は、1つは自分が教えてる教科をちゃんと正しく教えること、そしてもう1つは読書の楽しさを教えることだ」と具体化しています。この内容から判断すると、「教師の役割」=「教えてる教科を正しく教えて、読書の楽しみを分からせること」ですから、It = the teacher’s roleだと錯覚してしまいます。西きょうじのこのミスに気がついた諸戸先輩は流石です。
でも、このitはただの形式主語です。あんまり辞書には載ってませんが、It comes down to the fact that文は慣用表現です。この英文の出典を調べようとネットで検索したところ、このitを結構な数の人間が議論してますね。ちょっとビックリしています。それに、itを形式主語だと分かっている子が1人もいなかったのにも驚愕しています。皆んな難しく考えすぎている気がします。

One Comment

  1. 諸戸 wrote:

    薮下先生
    ご返答ありがとうございます。御礼が遅くなりました。
    itとthe fact thatの組み合わせは構文になりがちなので、最初にはそれを疑っていたのですが、come down toの群動詞としての意味にこだわり過ぎて上記のような解釈をしていました。
    外国サイトの群動詞パラフレーズ問題集のようなところで≒be because ofという記述があったことも持論の根拠になり得たわけですが、
    it comes down toの後にthe factが来るかどうかで捉え方を変える(原理的には同義かもしれないが)方がいいようですね。
    お忙しいところありがとうございました。
    諸戸

    火曜日, 7月 7, 2015 at 8:57 PM | Permalink

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