乾君の挑戦・その5
皆で一緒に考えた英語が、龍安寺の英語のパンフレットになる企画の3回目です。この日本語は、パンフレット冒頭の年表の一部です。
<問題>
1147年、藤原実能(ふじわらのさねよし)、円融寺(えんゆうじ)跡を領有、ここに山荘を営み徳大寺を建立。後の家名となり、徳大寺家が山荘を世襲。
<答案>
In 1147, Fujiwara no Saneyoshi took possession of the ruins of Enyu-ji Temple and built a villa and Tokudai-ji Temple in the grounds. It had become their family name, and they owned the villa by succession.
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
3.指示代名詞は、前にある実際の名詞を指示する!
お寺の名前が苗字になるのは普通で、山田くんと7人の魔女の「西園寺リカ」とか、元WBC世界バンタム級チャンピオンの「薬師寺保栄」なんかも、いわゆるお寺系の名前です。ですから、ここは「徳大寺」というお寺の名前が苗字になったと言ってます。
添削してると、初心者ミスでよくあるのが「具体的に何を指しているのか分からない指示代名詞のitやthey」です。日本語は少々曖昧でも許されるのですが、英語はitなら前に実際にある単数形の名詞、theyなら複数形の名詞を指します。だから、ここでItを使うとthe villaかTokudai-ji Templeしかさせません。でも、文脈からすると「そのお寺の名前が苗字になった」という意味ですから、itではなくてthe name of the templeにしなくてはなりません。
4.完了形にすると1147年には既に家名になっていないといけない!
完了形は、文字通り、その動作が終わったという意味です。そして、大切なのは「現在完了」なら「今終わった」、「過去完了」ならば「その時終わった」ということです。でも、過去完了の「その時」っていつなのか分かりますか?
問題文の冒頭に「1147年」とありますよね。ということは、ここで過去完了を使ったら、「お寺の名前が苗字になった」ことは1147年に完了していなくてはなりません。でも、問題文からも分かるように「後に家名となり」なので、徳大寺が苗字になったのは1147年ではないので、過去完了は使えません。
学生時代に「時制」、特に「完了」に苦しめられた僕ら日本人は、とにかく過去より古い出来事は何でも「過去完了」にしてしまいます。もちろん、「過去より古い過去完了(大過去)」なのですが、それは過去の基準点から考えてそれよりも前だと言ってるだけです。つまり「思っていたよりも良かった」とか「なくした物が見つかった」の様に、「良かった」と感じる前に「大したことないと思った」わけだし、「見つかった」より前に「なくした」わけです。すると、問題文の過去の基準点、つまり「その時」は1147年だということです。
だから、ここでは「過去完了」ではなくて、ただの「過去形」を使わないといけません。そして、徳大寺が自然になんとなく家名になったんじゃなく、「人が徳大寺を家名にした」、「徳大寺は人によって家名にされた」わけですかっら、受け身にします。こんな具合です。
⊿その寺の名前は、後に家名となった。
The name of the temple was eventually made the family name.
ね!翻訳って、結構勉強になるでしょ!最終文は次回にします。
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This was written by
yabu. Posted on
日曜日, 7月 5, 2015, at 9:51 AM. Filed under
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