村上君からの質問
<質問>
これは2014年度、筑波大学文系前期試験、大問1の一節です。
The history of books led to a second technological shift when the codex replace the scroll sometime soon after the beginning of the Christian era. By the third century AD, the codex―that is, books with pages that you turn as opposed to scrolls that you roll―became crucial to the spread of Christianity. It transformed the experience of reading: the page emerged as a unit of perception, and readers were able to leaf through a clearly written text, one that eventually included differentiated words, paragraphs, and chapters, along with tables of contents, indexes, and other reader’s aids.
赤本の和訳はこうなってます。
本の関市が2番目の技術転換に結びついたのは、西暦紀元が始まって間もない頃、写本が巻物に取って代わった時だった。紀元3正規までには、写本、つまり巻き上げ敷きの巻物と違って、めくるページを持った本は、キリスト教の普及において非常に重要になった。読むという体験を変化させたのである。つまり、ページという物が認識可能な単位として現れ、そして読者は分かりやすく書かれた文章をパラパラとめくって読めるようになった。その本はやがて区分された語、段落、章を持つようになり、目次や索引やその他読者を補助するものが添えられた。
文中のa clearly written textとoneとは「同格のコンマ」を挟んでいるので、等価のはずなのに、一方は「分かりやすく書かれた文章」、他方は「その本」と訳してあります。これって正しい訳なのでしょうか?僕には「文章」と「本」とは全く別物のように思われるのですが、薮下先生はどう思いますか?
<回答>
村上君!赤本も相変わらずですね。これは君の言うとおりで、「a clearly written text = one」の同格関係です。なのに、「文章≠本」になってしまってます。全く考えの浅い訳語を付けたものだと思います。「文章」というのは詩に対する散文のことで、一般的には文の種類を言ってます。あるいは、そんな文が沢山集まった状態を指します。一方「本」は印刷された出版物のことで、抽象的な種類ではなく、具体的な物のことを指して使います。だから「文章」と「本」とが同格なわけがありません。「僕は本を持ってる」とは言えても、「僕は文章を持ってる」とは言えません。
ここは、薮下ならば「文書」と訳出します。「文書」は文字で書かれたものの総称ですから、こっちの方が使いやすいと思います。だから、「読者は見やすく書かれた文書のページをパラパラとめくって読めるようになった。文書はやがて区分けされた語、段落、章を持つようになった」としてやります。あ、clearly writtenというのは、「分かりやすい」のではなくて「見やすい」のです。これも赤本は誤訳してますね。
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