森田君の挑戦(34)
<問題>
2010年度・京都大学・Ⅲ(2)
私たちは漠然と犬やイルカを賢いと思っているが、動物の賢さを測る客観的な基準に基づいてそう判断しているわけではない。そういった動物の場合、人間の命令によく従うほど、頭が良いように見えるだけではないだろうか。人間の場合には種々のいわゆる客観テストなるものがあるが、それも結局、出題者の指示によく従うことが高得点に結びついているのかもしれない。
<答案>
We vaguely regard dogs and dolphins as wise animals, but we don’t think so according to the objective scales which can measure how wise animals are. I wonder if such animals tend to obey human commands. So they seem wise. On the other hand, there are many kinds of examinations to investigate the human ability to judge objectively. In this case, people who often obey the questioner’s advice may get a high score.
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
もし、森田君の答案の I wonder if がなかったら、全く問題はありませんでした。なぜなら、A because B も、B, so A も同じ「理由の論理」だからです。ただ「原因・根拠」と「結果・主張」とが逆になっているだけです。こんな感じです。
⊿彼はとても興奮していた。それで少しも眠たいと感じなかった。
He was very excited, so he didn’t feel sleepy at all.
=He didn’t feel sleepy at all because he was very excited.
でも、I wonder if+文やI think that+文があれば、その直後に「結果・主張」がこなくてはいけません。森田君のようにすると、こんな意味になってしまいます。
「動物は人間の命令に従う傾向があるんじゃないかと私は思います。そういうわけで、彼らは賢いようなのです」
ね!「私が思う」から「動物は賢い」なんてヘンでしょ。だから、I wonder if such animals seem wise because they tend to obey human commands.としてやります。
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This was written by
yabu. Posted on
木曜日, 1月 24, 2013, at 7:19 AM. Filed under
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2 Comments
京都大学III(2)には「ある鉄則」がありますが(笑)あえてweb上では書かないという原則を貫いておられるわけですか。
日本語第1文を英文でも1文で書くならば、「漠然と」を後の日本文とあわせて考えて、つまり「つながる」ように「正当な根拠なしに」とよみかえて without just causeなどとして、「抽象」としてかき、その後に具体例として日本文の「動物の賢さを測る客観的な基準に基づいてそう判断しているわけではない」の英文を後接する形がよいのでは。
公人くん!なかなかするどいご指摘ですね。でも、without just causeは残念ながらここでは使えません。また、「など」と誤魔化しているのもいただけません!without just causeは法律に関連する文脈で使う慣用句で、犬やイルカの話で使うと、へんてこりんな小学生の文章になってしまいます。ま、ここら辺は日本人には多分分からないと思います。without just causeはこんな具合に使います。
⊿彼のことを有罪だと思っているが、何の正当な根拠はない。
They believe him to be guilty but without just cause.
もし犬やイルカの話で「何の根拠もなく」と言いたいのなら、こうします。
⊿私たちは何の根拠もなく犬やイルカを賢いと思っている。
We regard dogs and dolphins as wise animals without any good reason [or without any facts].
薮下が採点官だったら、without just causeは減点ですね。そう言えば、薮下が河合でやっていた頃、京都大学の英作文のことについて、公人くんと同じ事を言っていた先生がいました。曰く、「京都大学の英作文(特に2つ目)は、問題文の日本語をそのまま英語にすると上手く行かない。それぞれの日本語が、問題文の文脈でどんな役割を果たしているのかを考えて、先ず和文和訳をする」。これはまさに公人くんがやっていることですよね。つまり、「漠然と」を後半の脈絡を考えて「正当な根拠なしに」と読み替えろと言ってました。ま、確かにその通りなのですが、ここでは別段vaguelyを使っても減点されることはありません。without just causeなんかよりもはるかに自然な英語です。
また、その先生は文と文との接続に注意をしなさいと言ってましたね。「2つの文が接続詞ナシでつながっていても、前後が<主張→理由・根拠>の関係ならば、becauseを、<譲歩→主張>の関係ならば[al]thoughをちゃんと補いなさい。逆に、接続詞らしきものがあっても、それをそのまま英語にすると大概は上手く行かないので、2文の関係をしっかり読み解いてふさわしい接続関係を考えなさい」と言ってました。これも公人くんがやっている通りで、「そうはいっても」を譲歩表現「万年筆やボールペンを使う回数が減っていくであろうことは認めるとしても」にしてますよね。
薮下は河合時代にこの先生に予備校英語を教わりましたから、彼の影響をとても強く受けていますし尊敬もしています。ですから、公人くんが言いたいことはとても良く理解できます。でも、受験英語なんてそんなに大したものじゃないのですよ!大学側は受験生に翻訳家並みの高いレベルの英語力を要求してはいません。京都大学も格調の高い知的な英語を求めているとは思えません。米国の中学生レベルの英語が正しく書ければそれで合格させてくれるはずです。ま、「米国の中学生レベルの英語」が結構難しいのですがね。
この「森田君の挑戦」も、「期待される理想的な英文」ではなくて、「普通の(自然な)英文」を頭に置いて添削をしています。そこのところが「予備校英語」とはちょっとちがいます。つまり、問題集や赤本の正解とは違うのだけれど、これだけ書いたら言いたいことが十分に通じる「自然な英語」になっているはずです。逆に、薮下に言わせると、問題集や予備校が用意する正解の方が、さっきのwithout just causeじゃないですが、とっても変な英語がたくさんありますよ!
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