AKB47君の憂鬱(6)
前回に引き続き、「現在の事柄に対する推量」のwillと「過去の事柄に対する推量」のwouldについてもう少し考えてみましょう。その前に、簡単に復習をしておきます。
⊿彼女は50歳ぐらいだろう。(英)
She will be about fifty.
⊿彼女が死んだとき、彼女は50歳ぐらいだったろう。
She would be about fifty when she died.
前回も使った例文ですが、「現在の事柄に対する推量」はイギリス英語でよく使う表現で、米語ではあまり見かけません。米語ではもっと簡単に副詞のprobablyを使ってこんな風に表現します。
⊿彼女は50歳ぐらいだろう。(米)
She probably is about fifty.
⊿彼女が死んだとき、彼女は50歳ぐらいだったろう。
She probably was about fifty when she died.
ましてや、推量の意味で「will have+過去分詞」や「would have+過去分詞」の表現なんて、米語にはほとんどありません。
⊿彼女は昨日その手紙を投函したのだろう。
She will have post the letter yesterday.(英)<GENIUS>
=She probably mailed the letter yesterday.(米)
先ず、post the letterの表現がイギリス英語であることを物語ってます。米語ならpostじゃなくてmailを使っているはずです。大体、yesterdayとwillを一緒に使っているのが気に入りませんよね。それに、これでは「現在の事柄に対する推量」にも「過去の事柄に対する推量」にも、どちらもwillが使えることになってしまいます。さらにwill have+過去分詞とくれば普通は「未来完了」ですよね。
⊿僕は夕方までにはその仕事を終えているだろう。
I will have finished the work by evening.
こうなると、「現在の事柄に対する推量のwill」と「未来完了」との区別もつかなくなってしまいます。こういうわけで、薮下は「推量のwill、would」を入学試験の問題にするのには、あまり賛成できません。教科書に出てくれば仕方がないので説明はしますがね!
さて、次に「would have+過去分詞」の可能性を考えてみましょう。そもそもwouldを使うのは普通、次の4つの場合です。
⊿彼は翌月には17才になると言った。(時制の一致)
He said he would be seventeen the following month.
⊿そのドアはどうしても開かなかった。(強い意志や拒絶の過去形)
The door wouldn’t open.
⊿ぼくは時々一人旅行をしたものです。(過去の習慣)
I would sometimes travel alone.
⊿もし私が鳥なら、あなたのところへ飛んで行くのに。(仮定法過去)
If I were a bird, I would fly to you.
昨日、AKB47君が言ってたのが一番上の「時制の一致」です。つまり、He said, “I will be seventeen next month.”の話法を換えるときに、セリフを過去形saidの流れに投げ込むのでwillがwouldになってるわけです。これと同じことが「未来完了」でも起こります。これが「would have+過去分詞」の1つ目の可能性です。
⊿彼は「僕は夕方までにはその仕事を終えているだろう」と言った。
He said, “I will have finished the work by evening.”
→He said that he would have finished the work by the evening.
もう1つの可能性は、みんながよく知っている「仮定法過去完了」です。
⊿もしあのとき私が鳥だったら、あなたのところへ飛んでいったのに。(仮定法過去完了)
If I had been a bird, I would have flown to you.
そして、この仮定法の仲間で「Ifを使わない仮定法」と言うのがありましたね。こんなやつです。
⊿もしあのときもう少し彼に我慢強さがあれば、上手くいったのにね。
With a little more patience, he would have succeeded.
⊿もしあのとき彼の手助けがなければ、僕らは成功しなかっただろう。
Without his help, we would not have succeeded.
⊿常識のある人なら、そんなことはしなかっただろう。
A man of sense would not have done such a thing.
最後の例は「仮定法過去完了」とも「過去の事柄に対する推量」とも解釈できるので、説明が混乱してしまっているのだと薮下は考えています。そもそも、仮定法自体が「推量」表現の1つなのだからややこしくなるわけです。
最後に、AKB47君の2つ目の質問ですが、以上のような理由で、「未来完了の時制の一致」、「仮定法過去完了」、「現在や過去の事柄に対する推量」は全部would have+過去分詞で表現される可能性があるわけです。でも、言葉は時間と共に角が取れて丸く、使いやすくなるので、「現在や過去の事柄に対する推量」はいずれは消えてなくなるんじゃないかと薮下は思います。
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