森田君の挑戦(28)
<問題>
1992年・京都大学
ヨーロッパの古い大学の多くは大都市の喧噪を離れた美しい田園か小さな町にあった。時代のめまぐるしい変化から一定の距離を保ち、思索と瞑想のうちに過去の文化遺産を検討し、次第に新しい文化を作り上げていった。
<答案>
In Europe, many colleges were built in the beautiful countryside or small towns. And these places were far from the big cities where people cannot be relaxed. People in these colleges kept a distance from a lot of changes of eras. And they considered their past cultural heritage, with themselves thinking and meditating. As a result, they gradually generated new culture.
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
森田君!君はいつも1つの名詞にいくつも形容詞をひっつけて、コテコテに飾り付けるのが好きでしたよね。だけど、今回は「大都市の喧噪を離れた美しい田園か小さな町」を「美しい田園か小さな町」と「それは大都市から離れたところにあってそこでは人はリラックスできない」の2つに分けましたね!薮下が期待したのは、飾りが飾りを飾っているこんな英語でした。
Many colleges were built in the beautiful countryside or small towns which were far from the big cities where people cannot relax.
別にこれでも悪くはないのですが、形容詞節の多重構造よりも、文を2つに分ける方がシンプルできれいですよ! さて、今回は「人がリラックスできない大都市」と、「思索と瞑想をしながら」の2つの表現を勉強しましょう。
①the big cities where people cannot be relaxed
relaxには自動詞で「リラックスする」と、他動詞で「リラックスさせる」の2つの用法があります。「人がリラックスした状態だ」と言いたいのなら、「人is relaxed」でその状態が表現できます。これは「モノが人をリラックスさせる(モノrelax人)」の受身形です。一方、「人がリラックスすることができる」と言いたいのなら、「人can relax」で動作が表現できます。これは、衣服を着ている状態なら「wear衣服」、衣服を着るという動作なら「put on衣服」なのと同じです。ここでは「大都市では人はリラックスできない」と言いたいわけですから、状態ではなくて動作表現ですよね。だから、people cannot be relaxedをpeople cannot relaxにしてやります。
②with themselves thinking and meditating
以前ここで「付帯状況のwith」と「付帯状況分詞構文」の共通点につて話しましたね。
⊿その犬は、舌をダラリと垂らして、そこで座って居た。
The dog sat there with his tongue hanging out.(付帯状況のwith)
The dog sat there, his tongue hanging out.(付帯状況の分詞構文)
これでいくと、「思索と瞑想をしながら過去の遺産を検討する」はこうなりそうです。
⊿彼らは思索と瞑想をしながら、過去の遺産を検討した。
They considered their past cultural heritage with them thinking and meditating.(×)
They considered their past cultural heritage, thinking and meditating.(○)
でも、残念ながらこうはならないのですよ。どうしてかというと、「付帯状況のwith」はその行為が瞬間的に終了しなくてはならないからです。こんな具合です。
⊿彼は目を閉じてソファに座っていた。
He was sitting on the sofa with his eyes closed.
「目を閉じる」動作は一瞬で終わりますよね。一方、付帯状況分詞構文は、その行為がしばらく継続することを前提としています。こんな具合です。
⊿彼女は本を読みながらソファに座っていた。
She was sitting on the sofa, reading a book.
「その本をチラッと見る」なら一瞬で終わりますが「本を読む」動作はしばらく続きます。だから、ここでは「付帯状況のwith」は使えません。問題文の「思索と瞑想をしながら」は「本を読む」と同じで、その動作がしばらく続かなければなりません。だから、ここでは「付帯状況分詞構文」を使って、with thinking and meditatingを, thinking and meditating on itとしてやります。
あ、thinking and meditatingだけでは何について思索、瞑想するのかわかりません。だから、thinking and meditating on itと思索、瞑想の対象を明示してやります。aboutやofでも良さそうな気がしますが、onじゃないとダメなのです。このonは「集中のon」と言って、こんな具合に使います。
⊿Aに集中する
concentrate on A
⊿Aに焦点を当てる
focus on A
思索するというのは、何かについて考えるというだけじゃなく、何かを熟慮・熟考するわけですから、「関連のof、about」じゃなくて「集中のon」を使わないといけないわけです。また、meditateの後ろにはofやaboutじゃなくてonが来ますよ!「集中のon」についてはここを参照してください。
あ、あ、「舌をダラリと垂らして」というのは特殊な状況で、動作が瞬時に終了するとも、その動作がしばらく継続するとも考えられます。だから、付帯状況のwithでも付帯状況分詞構文でも表現が可能なわけです。
・
This was written by
yabu. Posted on
水曜日, 12月 19, 2012, at 2:01 PM. Filed under
「森田君の挑戦」. Bookmark the
permalink. Follow comments here with the
RSS feed. Trackbacks are closed, but you can
post a comment.
Post a Comment