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検証『大矢英作文』・その弐

前にここtheについて説明しましたね。theの大切な働きは「共通認識」でした。つまり、その名詞を見たり聞いたりしたときに、「みんなが同じ内容を思い浮かべることができるかどうか」、ぶっちゃけて言うと「みんなが知っているかどうか」でした。みんなが知らなくて共通認識のないモノは先ず「初出のa」で話に持ち出して、みんなが知ったところで「既出のthe」でそれを受け、最後にはそれが代名詞化されました。
ということは、「承前語句」のit-they、this-these、that-those、such、the same、so は「みんなが知ってる」から使えるわけですね。だから、この「承前語句」にはtheと同じくらいの「共通認識」が必要なわけです。あ、他にも「所有格」や「固有名詞」も同じです。逆に、みんなの「共通認識」がないのにtheをつてはいけません。そんなことをすると、読んでいる方は、「え?それって何?」ということになります。さて、それだけのことを頭に置いて、次のテーマ英作文の正解を見てください。あ、これは260ページにあったやつです。
私は、英語を専攻するつもりで、とくに英語を読む能力を伸ばしたいと思っている。最近の日本人の若者は英語を話すことだけを学びたがっていて、読解力を実用的ではないとか時代遅れとかとバカにしているのは知っている。しかし、会話の「決まり文句」を繰り返してばかりいるより、英文学を読むことはもっと深い喜びを与えてくれるはずであり、だから私は読解の方に集中したい。
I will major in English, and I especially want to improve my reading ability in English.  I know many Japanese young people nowadays like to learn only to speak English, and they look down on the reading ability as impractical or out-of-date.  However, reading English literature will surely give you deeper pleasure than just repeating conversational ‘set phrases,’ and so I wish to concentrate on reading English.
本来、reading ability(読む力・読解力)には具体性はないし、みんなが知っているreading abilityなんてないので、普通はtheがつきません。そして、さっき書いたように「所有格」には共通認識が必要だから、my reading abilityと言ったときに、読み手はこの子(書き手)のreading abilityをある程度認識していなくてはなりません。ま、このmyは欧米人的な自己主張だから良いとして、次のthe reading abilityはいけません!意地悪く「既出のthe」と解釈すると、「世間は僕の読解力をバカにする」 ことになってしまいます。繰り返しますが、reading abilityには具体性はありません。だからtheはつけてはいけないのですよ。このtheを取ってしまえば正しい英語になります。
でも、次の様にreading abilityに飾りがついて、「特定の具体的な読解力」を指し、そしてみんながそれに共通認識を持っている場合にはtheがつきます。このtheが「飾り予告のthe」でしたね。
■この小説を理解するのに必要な読解力は彼にはない。
He doesn’t have the reading ability that is required to understand that novel.
でも、飾りがついているからと言って、いつも「飾り予告のthe」が付くとは限りません。それは次回説明しましょう。

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