<質問>
『基礎英語長文問題精講』14課の下線部(A)ですが、この「, telling」って付帯状況分詞構文じゃないのですか?解説を読むと telling は letters を修飾していて「~ということを述べる手紙」の意味だと書いてあります。全文訳も「日本の英字新聞には、列車の中や公共の場所でなくしたものが日本人によって持ち主に戻される話を伝える投書がしょっちゅう載る」 になってます。
(A)English newspapers in Japan frequently carry letters to the editor, telling how objects lost in trains and public places are returned by Japanese individuals.
<回答>
ヤンソン君!これはなかなか鋭い質問ですね!君がちゃんと英語を勉強しているのを裏付ける質問ですよ!旺文社の 『英文標準問題精講』 は往年の名著で、薮下も学生時代に精読しました。現在、薮下が授業で使う英文の「見取図」は、この問題集に載っていた構造図を発展させたモノです。当時、著者の原仙作(はら・せんさく)は受験英語のカリスマで、知らなければ受験生じゃないとまで言われた名教師でした。彼が他界した後、中原道喜という人が「問題精講」のブランド名を継承したようですが、どうもダメそうですね。
先ず、「, telling」は付帯状況分詞構文の形をしています。ですから、下線部(A)は「①~しながら(同時)」、「②~してそして・・・(連続)」のどちらかの用法で訳出することを求めています。文脈からすると、「伝えながら載っている(同時)」ではおかしいので「載っていて、そして伝えている(連続)」で訳出するべきです。そして carry や tell の主語は English newspapers ですから、これを日本語にすると「日本の英字新聞にはいつも編集者への手紙(投書)という欄が載っていて、そして列車の中や公共の場所でなくした物が日本人によって持ち主に戻される話を伝えている」となります。そして、この英文の和訳はこれ以外にはあり得ません。でも、よく考えると 「英字新聞が話を伝えている」 ではなくて 「編集者への手紙(投書欄)が話を伝えている」 じゃないと変です。じゃあ何がいけないのかというと、この下線部(A)の telling の直前にあるコンマが要らないのですよ!このコンマさえなければ付帯状況分詞構文にはなりません。コンマさえなければa book dealing with Japan(日本を扱っている本)と同じなわけです。まさかこれをa book, (コンマ)dealing with Japanと書く人はいないでしょ!下線部(A)の和訳のポイントがこのtellingなわけですから、この問題は「解答不能」です。
受験参考書や問題集には何万部も売れるようなベストセラーがありません。ですから、1冊にかける労力と時間とをできるだけ減らさねばなりません。そこで次から次へと新しい参考書や問題集を作ることになります。その結果、1冊の参考書や問題集の精度が悲しいぐらい落ちてしまいます。ミスプリントや誤訳は当たり前で、答えや解説が間違っているものがたくさんあります。薮下は『基礎英語長文問題精講』全部に目を通したわけではありません。でも、この14課を見ただけで次の様なミスを見つけました。
◆L7=On another occasion, (コンマ)I lost my wallet in a train.
occasionの直後にコンマを付けてはいけません。やっぱりコンマの付け方がおかしい!ネイティヴの書いた原文にはコンマはなかったはず。出題した専修大学か、改題した旺文社のどちらかが書き直したのでは?
◆L8=It, too, was returned promptly
完全に間違っている英文ではありませんが、tooを挿入表現にしてしまうと酷く稚拙な文になります。やっぱりコンマが絡(から)んでますね。
◆出典のPaul Mcheanなんて名前はありません。Paul McLeanが正しい!なぜネイディヴ・チェックをしないの?!
1ページにこれだけミスがあるのですから、後は推して知るべしです。実はこれは旺文社に限ったわけではありません。薮下は以前、河合出版から毎年発刊されている「センター試験対策問題パック」の問題を作っていたことがありました。執筆後に校正をするのですが、ある時他の先生の問題も校正してくれと頼まれたことがありました。薮下はその英語のあまりの酷さに閉口してしまいました。少しの手直しだけでは校正など不可能だったので、全部書き直して提出したところ、どうもその問題を作った人が河合に昔からいる英語科の重鎮だったらしく、次の年からセンターパックの仕事は来なくなりました。さらに、薮研に載せた「内容説明問題の解法」でも指摘しているのですが、赤本もひどいものです。こんな学習環境で本当にちゃんとした英語力が身につくのでしょうかね?!英語の参考書のミス(ウソ?)を見つけるたびに、薮下は暗澹(あんたん)たる気分になります。
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