英語を読むためのルール16・その7
<回答>
前回に引き続き、『桐原書店・英文解釈の技術100』の「85.目的語が文末に回った倒置を見抜け」に登場するA of Bの用法を勉強しましょう。
By nature, Einstein was, according to all accounts, the gentlest of men, and by conviction he was a pacifist, yet he made intellectual discoveries that led the way to the invention of weapons with which the species could destroy itself. Inspired wholly by a love of knowledge for its own sake, and by an awe at the creation which bordered on the religious, he made possible an instrument of destruction with which the earth could be totally disfigured.
あらゆる話によると、アインシュタインは生来、この上もなく心のやさしい人であった、またその信念においては平和主義者であった。だが彼は、人類が使用すれば自らを破滅に追いやることになりかねない武器を、発明させる知的発見をした。知識のための知識愛とほぼ宗教的とも言える創造に対する畏敬の念とにもっぱら触発されて、使用すると、地球がその美しさを全く失うことになりかねない破壊のための道具を可能にしてしまったのである。
先ず最初に、an instrument of destructionを考えます。「解法」にある分解図を見てみると、今枝君の言うとおり、前置詞 of の上には「のための」訳語が振られていますが、残念ながら of には「目的」の用法はありません。「目的」を言いたいならば普通は for を使います。
⊿破壊を目的とした道具
an instrument for destruction
では、この of は何かというと「関連のof」だと思われます。of は off と語源が同じ前置詞で、「離れる」から「引き離す」、「取り出す」の意味が派生します。例えば、話したい話題が幾つかあって、その中から1つを「取り出す」時に of を使ってこう表現します。あ、この of は前置詞aboutとほぼ同じ意味用法です。
⊿彼は自分の経歴に関しては何も話さない。
He never talks of his background.
=He never talks about his background.
そして、ここがポイントなのですが、前置詞とは「名詞の前に置く詞(ことば)」ですから、前置詞は基本的には直後に来る名詞とセットになります。言い換えると、「A of B」の形で使うよりも「of B」の形が一般的なわけです。この「関連のof」もof his backgroundで1つのセットになっています。そして、問題文のan instrument of destructionも「A of B」ではなくて「of B」がセットになってるわけです。道具には色々あって、何をする道具かを限定しているのが「関連のof」なのです。
⊿破壊に関わる道具
an instrument of destruction
最後のEinstein was the gentlest of menも、やっぱり「of B」のタイプです。これは中学の時に習った最上級表現に出てきたofと同じです。
⊿Tomは3人の中で一番背が高い。
Tom is the tallest of the three [boys].
このofも「3人の少年の中から一番背の高いトムを取り出す」の意味ですから、やっぱり「離れる」から派生したことが分かりますね。
⊿アインシュタインはとっても優しい人でした。
Einstein was the gentlest of men.
だから、この文は「アインシュタインは人々の中で一番優しかった」が原義ですが、特定の人々と比較しているわけではないので、一種の強調だと考えて良いでしょう。今枝君!これで分かりましたか?
あ、これはどうでも良いことなのですが、著者はaccording to all accountsを「あらゆる話によると」と和訳していますが、これはby all accountsやfrom all accountsと同じ表現で「みんなの話では」とか「誰に聞いても」の意味の慣用表現です。「あらゆる話によると」じゃあ、よく意味が良くわかりません。
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