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【講義ノート83】Thoughは消さない!

▼彼女は外国に1度も行ったことがないのだけれど、彼女は数カ国語を話すことができる。
Though she has never been abroad, she can speak several languages.
さて、この例文の「AだけれどB」は文の「安定」条件を満たしていません。言い換えると、次の「安定」条件にかなっていません。
①副詞節が「時」を表しているとき
②副詞節が「理由・原因」を表しているとき
③副詞節が主節と「同時」か「連続」の関係にあるとき
ほらね!文の「安定」条件を満たしてないでしょ!つまり、「AするときB」「AなのでB」「AしながらB」「AしてそしてB」のどれにも当てはまってはいませんよね。「AだけどB」の文のことを「譲歩」構文と呼んでます。譲歩構文について知りたい子はここを参照してみてください。それじゃあ、この譲歩文を「手順」従って分詞構文してみましょう。
1.接続詞を消す。意味を明確にする場合は残しておく。
Though she has never been abroad, she can speak several languages.
このThoughは消してはいけません。だって「AだけどB」の文は「安定」していないので、Thoughが無くなると元々何がそこにあったのか分からないからです。だからThoughは意味を明確にするために残しておきます。
2.主語が同じなら消す。違っていたら残しておく。
Though she has never been abroad, she can speak several languages.
副詞節(オマケの説明文)のsheも主節(言いたい文)のsheも同じ人だから、副詞節のsheを消します。主節のsheを消してしまっては、言いたいことが伝わりません。
3.動詞を現在分詞に変える。完了形はhaving+過去分詞にする。
Though she having never been abroad, she can speak several languages.
動詞は完了形だから、having beenにしてやります。動名詞のところでもやりましたが、英語でhaving+過去分詞が出てきたら「前に~した」の意味を表します。ここでもやっぱり「前に外国に行ったことがない」と言いたいわけです。
5.notやneverは文頭に置く。
Though never she having never been abroad, she can speak several languages.
否定語neverを文頭に置きます。ここで注意して欲しいのは、she has never been abroadが文であって、thoughは文と文をつなぐ接続詞だと言うことです。だから、neverはshe has been abroadの前に出します。決してthoughの前に出してはいけませんよ!  こうして問題3の(4)の英文が出来上がりました。
■外国には一度も行ったことがないのだけど、彼女は数カ国語を話すことができる。
Though never having been abroad, she can speak several languages.
さて、どの学習者用の参考書を見ても、分詞構文の表す意味や内容は、時、理由・原因、条件、譲歩、付帯状況だと書いてあります。これを見ると「なんだ!譲歩も普通に分詞構文できるじゃん!」と思ってしまいます。でも、ここまで分詞構文を勉強した子は「違うでしょ!」「そうじゃないでしょ!」ということが分かるよね。だって、「条件」や「譲歩」は文が「安定」してないんだから!普通にThoughを消しちゃったら、元に戻せないということです。
ところが、参考書によってはこんな「譲歩」の例文を載せてるのもあります。よく見ると、消しちゃいけないThoughが、事もあろうに省略されてしまっているではないですか!!
▼これが事実であることは認めるが、それでも説明はできない。
Granting this to be true, we still cannot explain it.
←Though we grant this to be true, we still cannot explain it.
▼彼が正しいかも知れないことは認めるが、それでも私は彼の考えが気に入らない。
Accepting that he may be right, I still don’t like his idea.
←Though I accept that he may be right, I still don’t like his idea.
さて、なぜ「省略」できるのかというと、いつもよく使う表現なので無くても分かるからです。だから、Thoughを省略しても、Thoughが省略されていることがすぐに分かるくらい文が安定していなくてはなりません。ということは、ここでThoughが省略できた理由も「いつもよく使う表現なので無くても分かる」からです!よく見ると2つともパターンにはまってるのが分かるでしょ!つまり「~は認めるが、それでも・・・」のパターンです。これは日本語でも日常生活で頻繁に使うよね。こうなるともう分詞構文から生まれたとはいえ、熟語や慣用句のような「いつもよく使う表現」なのですよ!使っているネイティヴたちはこれが分詞構文だなんて思っちゃいません!では、次の分詞構文はどうでしょうか。
▼彼は若いので、仕事ができる??
Being very young, he is a good worker.
Though he is very young, he is a good worker.
これは全然ダメです。なぜならネイティヴはBeing very youngまで読んだときに「Because he is very young」の分詞構文だと思い、期待される後半は「仕事ができない」だと当然考えます。あいつ若いので、技術も知識もないわね!というわけです。今日やった例文もThoughがなければ同じ事が起こります。
▼外国に一度も行ったことがないのだから、彼女は外国語が話せない??
Never having been abroad, ~
ここまで読んだネイティヴは、Because she has never been abroadだと思い込み、「外国語なんか話せない」と話が続くと考えます。だから、文法書に書いてある分詞構文の表す意味や内容は、時、理由・原因、条件、譲歩、付帯状況であるという定義がいかに罪深いか、世の英語の教師達は全然分かっちゃいません!!
世の参考書に散見する分詞構文に関するこの様な記述は、分詞構文の一面的な特徴を書いているに過ぎず、実際の生きた英語とは大きな隔たりがあるのですね。「群盲、象を撫でる」という寓話を知ってますか?目の見えない子供たちが象をさわって、口々にその特徴を挙げてゆくやつです。耳をさわった子は「大きな団扇(うちわ)だ」と言い、足をさわった子は「太い柱だ」と言い、鼻をさわった子は「長い棍棒だ」と言います。でも、それは全部、象の一面的な特徴であって、象が実際にどんな生き物なのだか決して分からないわけです。これと全く同じ事が英文法にも当てはまります。学者や教師は口々に分詞構文ってこうだ、ああだと、その部分的な特徴を論じるのですが、それはどれも実際の生きた言葉を言い表してはいないのですね。分詞構文の話をするのなら、分詞構文の「手順」だけじゃなくて、文の「安定」に触れないと現実を見誤りますよ!あ、またブリブリ長くなってしまいました。ごめんなさい。
【第20章 分詞(2)】問題3の(4)

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