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三木翔くんからの質問(赤本=バカ本?)・その1

<質問>
次の英文は2015年度、同志社大学の経済学部で出題された大問1の第1段落です。
Digital media raise a variety of issues as we try to understand them, their place in our lives, and their consequences for our personhood and relationships with others.  When they are new, technologies affect how we see the world, our communities, our relationships, and our selves.  They lead to social  and cultural reorganization and reflection.  In her landmark study of nineteenth-century popular scientific magazines, Carolyn Marvin* showed how a new technology such as electricity, the telegraph*, or the telephone creates a point in history where the familiar becomes unfamiliar, and therefore open to change.  This leads to anxiety.
赤本の訳文は次の様になってます。
私たちがデジタルメディアを理解しようとする、すなわち私たちの生活におけるその役割や、デジタルメディアが私たちの個性や他の人々との関係に与える影響を理解しようとするとき、デジタルメディアはさまざまな問題を提起する。デジタルメディアが新しいとき、その科学技術は私たちが世界や地域社会、私たちの関係性や自己といったものをどのように見るかに影響を与える。それらは社会的、文化的な再編や熟考を引き起こす。キャロリン=マーヴィンは、19世紀の大衆科学雑誌に関する画期的な研究において、電気や電信や電話のような新しい科学技術が、どのようによく知っているものがわからなくなりそれゆえ変化を受けやすくなる瞬間を歴史上に作り出すかを示している。これは不安につながっていくのだ。
訳文の中で赤本は下線部のところを、「デジタルメディアが新しいとき、その科学技術は~」と訳出しているのですが、なぜtechnologiesが「その科学技術」になるのでしょうか?the technologies which are used in digital mediaなら「デジタルメディアに使われているその技術」の訳になると思います。でも、冠詞なしのtechnologiesですから、特定の物に使われている科学技術ではなくて、漠然と科学技術全体のことを言ってるのではないでしょうか?薮下先生の考えを聞かせてください。
<回答>
三木翔くん!中間テストも良くできてましたし、この質問もなかなか鋭い!最近は調子が良さそうですね。さて、これは君の言うとおりで、赤本の誤訳です。赤本の誤訳を今まで薮研で色々取り上げて来ましたが、これが一番ヒドいですね!この著者は英語が全く分かってません。こんな子に同志社大学をやらせちゃダメでしょ!赤本さん。
theyは承前語句ですから、普通はtheyより前の複数名詞を指します。でも、インテリっぽく気取った英語の中では、theyがそれより後ろに出てくる名詞を指すことがあります。つまり「承」ではなくて「承」になるわけです。赤本の著者はそのことを知らなかったみたいです。これって、ちょっと英語を読んでいれば気がつくことです。
それに、同じ「承語句」表現が次の所にも出てきますよ。
19世紀の大衆科学雑誌を扱った彼女の画期的な研究の中で、キャロリン=マーヴィンは~
In her landmark study of nineteenth-century popular scientific magazines, Carolyn Marvin showed~
ほらね!ここでも先ず代名詞のherが出てきて、次にそれが具体化してCarolyn Marvinになってます。頭のよい子なら、ここで気がつくはずです。それに、こういう書き方(スタイル)があるということは、ちょっと英語を読んでいれば分かります。逆に、それが分からないってことは、この子は英語をあんまり読んでないってことです。
さらに言えば、digital mediaというのは、「パソコンで作成、修正、保存ができるデータ」のことですから、「digital mediaが新しい」と言うのは「データが新しい」と言ってるのと同じですから、この段落の主旨とはズレてしまいます。この段落ではデータの新しさを問題にはしてません。
以上のことから、このtheyは、前のdigital mediaではなくて、後ろのtechnologiesを指していると分かります。だから三木翔くんの違和感は正しかったわけですね。薮下の和訳を付けておきます。参考にしてください。
デジタル・メディアを理解しようとするとき、言い換えると、僕らの生活の中でデジタルメディアが果たす役割や、僕ら個人や他人との関係に与える影響を理解しようとするとき、デジタル・メディアに関わる色んな問題が起こってくる。技術が新しくなると、それは僕らの世界の見方、地域社会の見方、人間関係の見方、そして自分自身の見方に影響を与える。技術が変わると、(それに応じて)僕らは社会や文化の仕組みを作り直したり、(その仕組みを)よく考えたりする。キャロリン=マーヴィンは、19世紀の大衆科学雑誌を扱った彼女の画期的な研究の中で、電気や電信、電話が出てきたように技術が新しくなると、僕らが慣れ親しんだ状態に違和感を感じるようになって、そのために(慣れ親しんだ状態が)変わりやすくなる瞬間が歴史の中でどのように到来するかを教えてくれた。(なぜなら)慣れ親しんだ状態に違和感を感じるようになると、それは不安を引き起こすことになるからだ。
他の部分の訳語でも「よく知っているものが分からなくなり」って、それじゃまるで認知症じゃないですか?この子のは英語だけじゃなくて日本語も良く分かってないような気がします。「その1」になっているのは、もう少しアラ探しをしてみようと思っているからです。きっとたくさん出てきますよ!!

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