英語を読むためのルール16・その4
<質問>
またまた『桐原書店・英文解釈の技術100』で分からないところがあります。「78.複雑な2重否定は肯定を強めて訳せ」の演習問題とその和訳です。
Ruskin said; ‘Great nations write their autobiographies in three manuscripts, the book of their deeds, the book of their words and the book of their art. Not one of these books can be understood unless we read the two others, but of the three the only trustworthy one is the last.
ラスキンは言った。「偉大な国家は自伝を書くのに3つの本、すなわち行為の本、言葉の本、芸術の本、を使う。3冊の本の内、他の2冊を読まないで理解できるものは1冊もないが、3冊のうちで唯一信頼に値するのは3つ目(の芸術の本)である」と。
「国家が自伝を書く」もヘンだと思うのですが、それは置いておきます。「国家が3つの本を使って歴史書を編纂する」というのが僕にはとうしても理解できません。この「使う」というのはどの単語の訳なのでしょうか。僕にはどこにも「使う」に当たる英語を見つけることができません。薮下先生はどうお考えでしょうか。
<回答>
赤本もひどかったのですが、『桐原書店・英文解釈の技術100』も全然負けてないですね!国史を編纂するときに使えるような虎の巻があったらとっても便利なのでしょうが、そんなものがあるわけありません。
今枝君!おそらく著者はin three manuscriptsの意味が分からなかったのだと思われます。ま、普通はmanuscriptsじゃなくてvolumesを使ってこういうので、ちょっと分かりにくかったのでしょう。
⊿この小説は全3巻で構成されている。
This novel is in three volumes
ちょっと変則的ですが、問題文のようにvolumesの代わりにmanuscriptsを使う場合もあります。ですから、問題文は「大国は普通、国史を上中下の3巻で編纂します」と和訳しないといけません。
・
2 Comments
またまた、赤本の解答に疑問をもったので質問させていただきます。今回は、かなり疑問点が多いためかなり長いですが、お付き合い願います。
2010年度 名大 第4問(英作文)
(A)「(1)近年、コンピューターや携帯電話など、先端技術によって生まれた製品が私たちの生活をより快適にしてきたことは確かである。」しかし、文明の発展とともに人々は、衣食住など本当に必要なものだけで満足するのではなく、本来生活に不必要なものまで求めるようになった。「(2)とくに20世紀後半になり、この傾向はより顕著になった。」私たちのまわりには、それがなくても生きていけるような物品があふれている。
まずは、(1)についてですが、
以下は模範解答です。
It is true that recently products built using advanced technology, such as computers and cell phones, have improved our way of living.
まずは、(1)についてです。
赤本によると、「products built using advanced technology」で「先端技術を用いて作られた製品」と表現するとありますが、
①「製品を作る」と表現するときに「build」を用いるのか。
②「built using advanced technology」は文法的におかしくないか。
という2つの疑問が浮かびました。
まず、①についてですが、
辞書を引くと「作る」の意味をあらわす単語を以下のように分類していました。
(英語類語使い分け辞典より)
・make→「作る」という意味のもっとも一般的な語
・manufacture→機械などを使って大規模に製造すること。普通工場で製造する場合に用いられる。
・build,construct→普通建物、橋、船舶などの大きなものを建造すること。constructは設計に従って建造するという意味合いがある。
・produce→人、工場などが製品、農産物などを大量に生産すること
これに従った場合、この文章では「build」は明らかに不適切であり、「make」、「manufacture」、「produce」のいずれかを使うべきだと考えられます。
次に②についてですが、
「products built using advanced technology」を能動態の文章に直すと以下のようになるかと思います。
We build products using advanced technology.
これって、明らかに文構造が崩壊してますよね。
よってここでは、
「products built by using advanced technology」
とすべきだったと考えられます。
さらに、「私たちの生活をより快適にしてきた」を
have improved our way of living
と表現していますが、
私たちの生活様式を向上させる=私たちの生活をより快適にする
なのでしょうか?僕は必ずしもそうではない気がするのですが…
続いて、(2)です。
以下は模範解答です。
This tendency has become stronger especially since the late twentieth century, when some companies began to make products we didn’t really need for our lives.
ここでの疑問点は
「顕著になった」を「become stronger」としているところです。
「顕著」を国語辞典で引いてみると以下のように書いてありました。
(新明解国語辞典より)
きわだって目につき、疑いをいれる余地などが全くない様子。
「strong」に「きわだって目につく」とか「疑いをいれる余地などが全くない」という意味があるでしょうか?
少なくとも僕が調べた辞書には載っていませんでした。
先生はいかがお考えですか。また、間違い等ありましたら指摘をお願いします。
長文で失礼しました。
Z社長!返信が遅くなってしまいました。概略は学校でもお伝えした通りです。では、詳細を説明しましょう。
⊿私たちは最先端技術を使ってコンピュータや携帯電話などの製品を作る。
We build products such as computers and cell phones [,]using advanced technology.
先ずbuildですが、君の言うとおりで、buildは建物や橋などの大きな物を作る時に使います。だから「製品を作る」と言うときに普通はbuildは使いません。しかし、ここでは製品がsuch asを使ってコンピュータや携帯電話に限定されているので、「パーツを集めて組み上げる」の意味でbuildを使うことが可能です。でも一般的に「製品を作る」と言う場合には、Z社長が言うとおりmanufactureやproduceを使います。
次にusing advanced technologyですが、これはコンマが省略された付帯状況分詞構文で、「~しながら」の同時表現だと考えられます。だから「最先端技術を使って」の意味で使用可能です。この「コンマがない付帯状況」は結構厄介ですね。文の途中でいきなり現在分詞や過去分詞が出てきたら、もしかすると付帯状況じゃないか?と疑ってみることです。
また、Z社長の言うとおり「暮らし向きを改善する」ことによって「生活が快適になる」のですから、この2つは完全に同じ内容だとは言えず、原因と結果ほどの違いがあります。でも、「私たちの生活をより快適にしてきた」を「私たちの暮らしを改善してきた」と具体化するのは許容範囲内だと思われます。
最後に「顕著になった」ですが、これは主語がtendencyですからbecome strongerと言ってもかまいません。なぜなら、「強い傾向」という表現があって、strong tendencyとかpowerful tendencyと言えるからです。
Z社長!君の推論は相変わらずの切れ味ですね。「製造する」や「顕著になる」だけを取って考えると、君の言っていることは逐一もっともです。でも、言葉の面白いところ(厄介でもありますが・・・)は、それと組み合わされる主語や目的語によって使い方が広がるところです。ま、ここらは受験英語では何ともならないので、大学に行ってからたくさん英文を読んで身につけることです。明日のZ社長の成功を祈ってます。
あ、2003年の和訳問題ですが、ほぼ完璧でした。Ⅱの(イ)でimposingは「人目を引く」とか「堂々としている」の方が、(ロ)でturn to人は「人の方を向く」よりも「人に救いを求める」の方が良かったと思います。
・
Post a Comment