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森田君の挑戦(24)

<問題>
1996年度・京都大学

ワープロやパソコンが普及したおかげで、「書く」という行為はすっかり様変わりして、たとえば「筆をとる」といった言葉も死語になりつつある。そうはいっても、ペンを紙の上でさらさらとはしらせていくときのあの心地よさには、なかなか捨てがたいものがある。

<答案>

The action “writing” has become different completely, and nowadays we rarely use some phrases such as “take a pen,” for word processors and personal computers are widespread.  However, it is difficult for us to forget the comfortable sense which we feel when we smoothly write some words on paper.
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
この問題は「森田君の挑戦(16)」で一度やったのですが、この答案も良い勉強になると思います。あ、これは本当は山本君の答案です。英作文をやると、たいていは日本語の発想をそのまま英語に置き換えてしまう子が多いのですが、彼の答案はとっても英語的で自然で素敵です。さて、今日は「すっかり変わってしまった」と「心地よさ」の2つを勉強しましょう。
①has become different completely
completelyには、veryの仲間で形容詞や副詞の程度を表すcompletelyと、「完全に~する」と動詞を強めるcompletelyの2つがあります。そして、A become Bの文脈でcompletelyを使うと、どの程度AがBになったのかを表現する「形容詞・副詞の程度のcompletely」でしか使えません。あ、veryとの相対的な強弱はこんな具合です。
・・・rather、pretty<very <amazingly、surprisingly <extremely、terribly <completely、absolutely、entirely
形容詞・副詞の程度のcompletely」はveryの仲間ですから、形容詞や副詞の直前に置かないといけません。
書く」行為は非常に変わった。
The action “writing” has become very different.
The action “writing” has become completely different.
一方、「動詞を強調するcompletely」は文末でも動詞の前でもどちらでもかまいません。
僕は君の言うことを完全に理解した。
I completely understood what you mean.
I understood what you mean completely.
森田君の答案はcompletelyを「動詞を強めるcompletely」で使っていますね。人間の世界では、「AがすっかりBになる」ことはあっても、「完全に成る」ことはあり得ないのです。だから、has become different completelyをhas become completely differentにしてやります。
②the comfortable sense
senseにもsensationにも「感覚」の訳語がつくのですが、この2つは全く違う「感覚」を表現する名詞です。senseもsensationも「五感」の意味を表現できますが、sense of Aは「Aに関する感覚」、A’s sensationは「Aの興奮」と、表現している内容はまったく別物です。
視覚
sense of sight (見ることに関する感覚)= optical sensation(視覚の興奮)
聴覚
sense of hearing (聞くことに関する感覚)= auditory sensation(聴覚の興奮)
嗅覚
sense of smell(匂いに関する感覚) = olfactory sensation(嗅覚の興奮)
味覚
sense of taste(味に関する感覚) = gustatory sensation(味覚の興奮)
触覚
sense of touch(接触に関する感覚) = tactual sensation(触覚の興奮)
だから、sensationには「感動」とか「大騒ぎ」、「大評判」など、「興奮」に関連した訳語がありますが、senseにはありません。逆に、sense of Aで「A感(覚)」を表現できますがsensationではできません。
距離感
sense of distance
方向感覚
sense of direction
義務感
sense of obligation
正義感
sense of justice
これはどうしてかというと、senseは「感じること=能動的な知覚」に重点が置かれているのに対して、sensationは「感じられること=受動的な感情」に重点が置かれていることの違いです。ここに出てくる「書き心地の良さ」は、何かを積極的に知覚しようとする「感覚」ではなく、ペンを走らせるのは気持が良いなあという「感覚」なので、senseではなくてsensationを使わなくてはなりません。だから、the comfortable senseをthe comfortable sensationにしてやります。

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