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森田君の挑戦(12)

<問題>
1998年度・京都大学

「受賞おめでとうございます。どうして映画監督になりたいと思ったのか、少しお聞かせいただきますか。」 「そうですね。ちょっと答えづらいのですが、7歳の時にキャメラを買ってもらって、それがきっかけで、映像のおもしろさに気がつき始めたんだと思います。映画館をやっている叔父がいたのも、映画的環境に慣れ親しむ一因だったと思います。」

<答案>

“I celebrate you for receiving the award.  Could you tell me why you wanted to become a movie director?” “Well, I cant tell you well, but I think that it was because I found that movies were enjoyable because of a camera which I was bought when I was seven years old.  And my uncle ran a movie theater, so I could feel that it was natural that / there was something which was associated with movies around me.”
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
この年度の赤本の正解・解説はちょっとひどいですね。「どうして映画監督になりたいと思ったのか、少しお聞かせいただけますか」を赤本は May I ask you for a moment how~としてますが、こんな英語はありませんよ!Would you take a moment to tell us how~ならOKですがね。次の問題(2)にもヘンな正解がいくつもありました。教学社さん、しっかりしてくださいよ!
さて、森田君。今回は、語句の使い方よりも、文の論理的な組み立て方について勉強しなければなりませんね。「おめでとうございます」や「ちょっと答えづらいのですが」は語の使い方なのですが、「キャメラを買ってもらったのがきっかけで」や「叔父が映画館を経営していたのが映画に親しむ一因だった」などは文法や語法の問題ではなくて、文の論理的な組み立て方の問題ですね。
①I celebrate you
celebrateは誕生日や結婚式などの特別な出来事を祝う場合に使います。だから、I celebrate your birthdayとかI celebrate your weddingにはなっても、I celebrate youの様に「目的語」の所に人は来ません。だからここではcelebrateをcongratulateにしてやります。
②I can tell you well
tellは「人にあるまとまった内容を伝える、教える」が原義です。だから、I cannot tell youで「僕は君には教えてはあげられない」の意味になってしまいます。その直後のwellは意味不明です。この「ちょっと答えづらい」というのは、「説明するのが難しい」の意味ですから、tellをexplainにしてI cannot explain it wellにしてやります。
③because of a camera
because of a camera which I was bought when I was seven years oldで「僕が7歳の時に買ってもらったカメラが原因で」の内容だから、何の問題もないように思えます。でも、A because B(Bという理由で、その結果A)の因果律(原因-結果)の論理文では、BにはAという結果が引き起こされるだけの必然性が必要なのです。言い換えると、カメラを買ってもらった子がちゃんと映画監督になる必然性がそこにあるのならbecause of a cameraと言えるわけです。でも、そんなわけないよね!カメラは映画監督になる原因ではなく、単なるきっかけなのですから、ここではbecauseやbecause ofは使えません。だから、I got a camera from my parents when I was seven years old.  That gave me a chance to discover the appeal of movies.としてやります。あ、日本語化してる「アピール」は「世論に訴える」とか「人の心を打つこと」くらいの意味ですが、英語のappealは「魅力」の名詞になったり、「控訴する」とか「上告する」の動詞になったりするので注意が必要です。
④I could feel that it was natural that there was something which was associated with movies around me
先ず、前半のI could feel that it was naturalですが、別にこれが文法的に間違っているわけではありません。ただ、feelの目的語は、例えばit’s a nice day todayみたいな感覚的な印象や気分が来ます。でも、森田君の英文は後半に「僕の周りには映画に関係がある何かがあった」という事実が来てますよね。これは論理的にヘンです。
そして、前の部分で「映画館をやっている叔父がいた。それだから(so)、それは自然なことだった(it was natural)。それって何かというと(that)~」という文脈なのだから、it was naturalの後ろには「僕が映画と関わるようになったこと」が来ないと筋が通りません。だから、I could feelは取ってしまって、so it was natural that I was associated with moviesとしてやります。
森田君がやったようにthere was something which was associated with movies around meとすると、「僕の周りに映画と関係のある何かがあった」となってしまい、somethingはあくまでも「何かの事柄」なのですから、それが「叔父が映画館をやっていたこと」を指しません。だから論理的にとってもおかしな内容になってしまいます。
「A, so B.」や「A, because B.」の因果律を使うときは、ちゃんとAとBとの論理的な整合性を考えて文章を組み立てないといけません。そして、その論理は中学生でも分かるくらい明快でなくてはならないのです。

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