Skip to content

AKB47君からの質問

<質問>
以下は、1985年度の京都大学の下線部訳と赤本の解答です。
  “This question has been a source of controversy,” he said, slowly and deliberately, “for untold ages, and it is about time it should be definitely decided.  It has led to bloodshed in the past, and there is no reason to suppose it will be lead to the same in the future.  After much thought and consideration, not to mention mental worry and anxiety, it is my opinion, all side issues being swept aside, that a man’s lower limbs, in order to preserve harmony of proportion, should be at least long enough to reach from his body to the ground.”
 彼はゆっくりと慎重に言った。「この問題は数え切れない年月にわたって論争の種でした。そしてそろそろはっきろと決着をつけるべきときです。過去にはこれが流血の惨事を引き起こしたことがありますし、将来も同じ事が起こらないと考える理由はありません。精神的苦痛と心配は言うまでもなく、大いなる思索と熟慮の末、すべての派生的な問題をはらいのければ、私の意見は次の通りです。すなわち人の脚は、比率の調和を維持するためには、少なくとも胴体から地面に届くだけの長さはあるべきだということです。
下線の部分の英文ですが、僕は「精神的にとても不安であったのは言うまでもなく、考えに考えた末に、どうでも良い問題を全て排除して、(そして)私が出した意見は次の通りです」と和訳しました。なぜなら、これは「, -ing」の付帯状況分詞構文だから、「~して(そして)・・・」か「~しながら」だと思ったからです。そして、「全て排除しながら」ではちょっと変なので、「全て排除して、(そして)」の訳を付けました。でも、赤本の和訳は「(もし)すべての派生的な問題をはらいのければ」になっています。これは「付帯状況」ではなく「条件」の訳ですよね。薮下先生は前に、「時」や「理由」は接続詞を省略しても良いが、「条件」や「譲歩」の接続詞は省略してはダメだと仰ってましたね。それなら、この赤本がやっている「条件」の訳は間違っているのでしょうか。また、僕の和訳はどうなのでしょうか。明解な説明をお願いします。
<回答>
AKB47君!またまた京都大学の下線部訳ですね!それも、結構前の年度の問題に挑戦しているのにはビックリしました。多少の悪文も含まれてはいますが、京都大学の下線部訳の過去問を全部やれば、かなり上手に英文の構造を見抜けるようになるはずです。それに、君は「類義語の繰り返し」という強調のテクニックをちゃんと分かった上で訳出していますね。その意味では、赤本のよりもAKB47君の和訳の方がレベルが上です。どういう事かというと、much thought and considerationmental worry and anxietyはandを挟んで、左右にあるのはほとんど同じ意味の言葉です。そうすることによって著者は自分が言いたいことを強調することができるわけです。これをわざわざ赤本がやっているように「大いなる思索と熟慮」とか「精神的な苦痛と心配」などと2つを訳し分ける必要なんてないわけです。強調されていれば良いわけですから、君がやったように「考えに考えた末」とか「精神的にとても不安だった」とやる方がスマートですよ!
それにしても、大分前に薮下が書いたことを君は良く覚えていましたね!確かに「時」や「理由」は明快な論理なので接続詞を省略してもかまわないのですが、「条件」や「譲歩」なんかは、よほどのことじゃないと消したりはしません。だから、君の推察どおりで、もし相手にハッキリと「条件」だと伝えたければ、ちゃんとif all side issues are swept asideと書けば良いわけです。それを書いてないということは、どっちでもOKだということです。そのくらい分詞構文っていい加減な表現なのです!だから、この下線部の採点基準は、「分詞構文だと分かっていて、日本語に不自然さがなければOK」という所です。こんな具合です。
・どうでも良い問題は排除し(付帯状況)
・どうでも良い問題を排除したならば(条件)
・どうでも良い問題は排除したときに(時間)
ま、「時」と「条件」なんて、そんなにハッキリとは区別がつかないので、こうなっても仕方がないんです。つまり「もし寝るなら電気を消してね」も「寝るときには電気を消してね」も同じだもんね!
1つ気になるのは、AKB47君は文中に登場する「, -ing」をすべて「付帯状況」だと考えているところです。ま、その可能性は高いのですが、例外もたくさんあります。言い換えると、分詞構文は、「文頭」でも「文中」でも「文末」でも、結構いい加減に配置できるのです。こんな具合です。
その老紳士は、何をしゃべって良いのか分からなかったので、黙っていた。
Not knowing what to do, the old gentleman remained quiet.
The old gentleman, not knowing what to do, remained quiet.
The old gentleman remained quiet, not knowing what to do.
だから、「, -ing」だからといって、必ず「~しながら」や「~してそして・・・」になるとは限らないわけです。

2 Comments

  1. よしひろ wrote:

    こんばんは。
    久しぶりに質問させてもらいます。 
    With unemployment in the USA and some European countries hitting near record lows and significant skills shortages in some areas, a strong push to retain older workers is developing.
    この文頭にあるのは付帯状況のwithで、そこまではわかるんです。。。
    2個目のandのあとにはwithが省略されていますよね?でもそうすると、and以降がwith O C の形ではなく、with O(ここではsignificant skills shortage)になりますよね?ならこのwithは付帯状況ではないwithですよね?だとしたら原因、手段、、、、いろいろあるなかで、原因がいい気がしました。すると訳は模範どおり
    「合衆国やいくつかのヨーロッパ諸国の失業率がほぼ最低となり、いくつかの分野においては熟練労働者が相当に不足しているため、高齢の労働者をかかえておこうという強力な動きが進んでいる。」
    になるみたいです。。
    僕が違和感を感じるのは、前置詞には変わりはないものの、異なるはたらきをするwithが、等位接続詞のandでつながっていることです。説明をお願いします。

    木曜日, 10月 18, 2012 at 11:53 PM | Permalink
  2. yabu wrote:

    「よしひと君」、じゃなくて「よしひろ君」!本当に久しぶりですね。遠慮せずに、どんどん質問をしてくださいよ!よしひろ君の質問は、目の付け所が面白くて、ハイレベルな質問です。ですから、きっと『薮研』を見てる皆んなも良い勉強になるはずです。
    さて、ご質問の英文ですが、よしひろ君の見立て通りで、with unemployment hitting near record lowは「with O+C」の形をしています。そして、OとCの間にin the USA and some European countriesが挟まっているので、「with O+C」の形を見抜くのが結構むずかしい英文になってます。だから、これをちゃんと見抜けたのはさすがです。でも、この「with O+C」は「付帯状況」ではなくて「理由・原因」なのですよ!つまり、「with O+C」には「付帯状況」だけでなく「理由・原因」の意味もあるのです。こんな具合です。
    ⊿もうすぐ秋なので、セーターを出しておきなさいよ。
    With fall coming soon, you will need to get your sweater ready.
    こう考えると、andが結んでいるのは2つとも「理由・原因のwith」なわけですから、よしひろ君の「違和感」もなくなると思います。あ、「with+O」だけでも、「Oが原因で」の意味になります。こんな具合です。
    ⊿あれだけの経験があるのだから、彼はきっと勝つ。
    With such experience, he is sure to win.
    だから、見方を変えるとWith unemployment and skills shortagesで「失業や技術不足が原因で」の意味の中心的な部分を表現していて、名詞unemploymentを飾っているのが形容詞のin the USA and some European countriesやhitting near record lows、名詞skills shortagesを飾っているのがsignificantやin some areasとも解釈ができます。ご質問の部分だけを見取り図にするとこんな感じです。
    ⊿ほぼ過去最低の値に達している失業率
    unemployment hitting near record lows
    これは現在分詞が形容詞の働きをしているだけなので、「with O+C」じゃなくて「with+O」と捉えているわけです。ま、Cを主要構成要素と捉えるか、単なるオマケの飾りと捉えるかの違いだけで、結局は2つとも同じ事を言っています。
    それにしても、この英文にはrecord low(最低値)とかstrong push to~(~しようとする強い力)なんかが出てきたり、「技術不足」をskill shortagesじゃなくskills shortagesとしているところなんて、結構むずかしいクセのある英文ですね。

    金曜日, 10月 19, 2012 at 1:48 PM | Permalink

Post a Comment

Your email is never published nor shared. Required fields are marked *
*
*