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法律行為は無効か?それとも取消可能か?(2)

今回は設問をロジックだけでなく法律的な視点からも考えてみましょう。
意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。(R03-05-4)
法律行為は、それをどの様な観点から見るのかによって法律効果が違ってきます。認知症患者が不動産の売買契約を行った場合、その法律行為は次の2つの観点から見ることができます。
意思能力が欠如している状況での法律行為
後見開始の審判が行われた状況での法律行為
それぞれの状況を考えてみましょう。
①認知症が重篤で意思能力を完全に喪失している場合は、認知症患者の行った法律行為は無効で、後見開始の審判を受けている場合でもやはり無効です。
②認知症患者が家庭裁判所による後見開始の審判を受けて成年被後見人となった場合は、認知症患者の行った法律行為は取り消すことができます。この取消は意思能力があった場合でも取り消せます。
宅建の設問を解釈するときの重要なポイントは、「意思能力の欠如による無効」と「後見開始の審判による取消可能」という法律効果が現れるタイミング、法律効果を論じる観点を明確にすることです。
前回見たように、現実の世界で認知症患者は論理的には(=ロジックでは)「意思能力欠如者」にも「後見開始の審判を受けた成年被後見人」にもなり得ます。その結果、2つの法律効果の境目が曖昧になってしまいます。ですから、法律の世界では法律行為が行われた状況を明確に規定しないといけません。言い換えると、法律の世界のロジックはとても非現実的な切り抜き(=抽象化)によって成り立っているわけです。
では、設問文をどのように変えると現実世界に近づけられるのでしょうか?
意思能力を有しないときに行った法律行為は、後見開始の審判を受けている場合であっても、意思能力の欠如を理由に無効である。そして、後見開始の審判に基づく取り消し可能性の判断とは別個に扱われる。
ま、この出題では受験生全員が正解してしまうので、選抜試験の意味がなくなりますがね。結局、深く考えずにテキストの内容を丸暗記している受験生が合格します。頭が良くて考えが深すぎる人は合格できません。

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