西洋に住んでいる大部分の人は、西洋文化が危機的状況に瀕してるのに、自分たちがそんな状況の中で生きていることを自覚していない。でも、この危機的な状況とその性質を理解している研究者は少なからずいて、異口同音にこう言っている。
その危機的状況とは、「不安」「憂鬱」「時代が抱える病」「気が喪失したこと」「人間が機械化したこと」「自己から、仲間から、自然から人間が阻害されたこと」である。
デカルト以来、人は感情や情緒、感覚とはかけ離れた考えをだんだん持つようになり、考える主体としての自己は感情から離れてしまい、知性だけで出来上がった自己に成り下がってしまった。そう考えることが合理的であって、感情は本質的に非合理的であると考えられるようになった。肉体や感情から分離した意識的な知性が自然をコントロールし、物を作ること、それを所有することが人生の目的となってしまった。生きることは所有することに支配されてしまったのだ。
エーリッヒ・フロム「精神分析学と禅仏教」
・
Post a Comment