薮下研究室

薮下は今、高校３年生の英作文の授業を１クラスだけ受け持っています。そこで使っているテキストが数研出版の『入試必携英作文Write to the Point』という竹岡広信氏の著作です。このテキストには『詳解』という詳細な解説が付いているのですが、これがよく分かりません。彼には英語を話すインフォーマントが何人かいて、彼らが色んな表現を「自然だ」、「不自然だ」とか「事務的だ」と批評（言いがかり！？）してるのをそのまま竹岡氏は『詳解』に書いてるだけで、なぜ不自然なのかの説明がありません。でも、そのインフォーマントが「不自然だ」と言ってる英語を見ても、まったく自然な英語だったり、「別解２が一番自然だというコンサルタントがいた」という英語が間違っていたりします。

 例えば「１７．重要表現（２）」のEXERCISES Aの２の(4)です。
△この学校に入学して以来、すでに９か月が過ぎた。
I started at this school nine months ago.
I came to this school nine moths ago.

 上の英語がその別解２なのですが、start at Aには「Aから始める」の意味はあっても「Aに入学する」の意味はありません。startを使いたいのならばI started going to this school と言えば「自然」です。正解のcome to this schoolなんて「入学」じゃなくて「転校」です。薮下が採点官だったら絶対減点します。

 例えば「１６．重要表現（１）」のEXERCISES Bの(1)です。
△お金に関して子供をどう教育するべきかの考え方は、人によって意見は様々だ。
Opinions on how people should teach their children how to spend money varies from person to person.

How people should teach their children how to spend money varies from person to person.

 竹岡氏は「opinionsを省いて、How people should teach their children how to spend money varies from person to personとするのは不自然」と言うのですが、これは至極当然で、opinions on how S should Vで「SがVすべきだという考え」がセットになっているからです。もしopinionsを使いたくなければshouldも一緒に取ってしまえば正しい英語になります。こんな具合です。
△お金に関して子供をどう教育するかは、人によって意見は様々だ。
How people teach their children how to spend money varies from person to person.

 ここからも分かるように、竹岡氏はどうして不自然なのかよく分かってないわけです。ただインフォーマントが「不自然だ」と言うからそう書いているだけなのです。

 例えば「１６．重要表現（１）」のEXERCISES Aの２の(4)です。
△動物と違って人間は考え、話すことができる。
Human beings are different from animals in that they can think and speak.

 竹岡氏は「in thinking and speakingは不可」と言うだけで、どうしていけないのかの説明がありません。inは「視点・観点のin」ですから、「考えることと話すことの視点に立つと」の意味で正しいと考える子がいても不思議はありません。ここは「なぜいけないのか？」の説明が不可欠です。次の英語を見てください。
△考え方という点で君と僕は似ている。
You and I are alike in our thinking.

 これを見て分かるようにin [their] thinking and speakingとすると「考え方や話し方という点で動物と人間は違う」の意味になってしまいます。つまり、人間も動物も話したり考えたりするけど、そのやり方が違うという意味になってしまいます。だからin thinking and speakingは不可なのです。

 これもインフォーマントが「ダメ」というので竹岡氏は「不可」と書いただけ。本当にこの問題集を使って勉強したら英語が書けるようになるのでしょうか？

 さて、ここまではただの「言いがかり」でしたが、次回は正解が間違っているという話をします。お楽しみに。
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