野々垣君からの質問(3)
前から慶應義塾大・総合政策の大問Ⅱ、第2段落の赤本の訳語を検証しています。
¶2
(2)It insists that it is social context alone that conditions and determines our concepts for understanding the world, and so creates the world, at least effectively, in the process.
<赤本の訳>
ただ社会的な状況のみが、世界を理解するための概念を条件付け、決定し、そうして世界をその過程で、少なくとも実質的に創造するのだと、その考えは主張する。
<薮下の訳>
社会の中での関係性だけが、世界を理解するための僕らの考え方を条件付けたり決定したりする。そして、現実世界の生成と変容の中で、関係性が世界を少なくとも効果的に作り上げている、と社会構成主義は主張する。
<解説>
社会構成主義は、現実世界(reality)は僕らの外側にただ1つだけ存在しているのではなくて、社会の中での関係性によってその人なりに意味付けされ、構成されると考えます。だから、このsocial contextは社会構成学の主張の大切な言葉です。これを「社会的な状況」と訳してはダメで、ちゃんと「社会的な関係性」と訳さないといけません。
次に、processですが、「世界をその過程で、少なくとも実質的に創造する」と訳出するとまるで創世神話です。残念ならが、神様が世界を創造する過程について説明するのが社会構成主義の目的じゃありません。
processは第1段落の第3文で登場します。赤本はこの「processes and transitions」を「過程や転換」と誤訳しています。
<赤本の訳>
(社会構成主義では)過程や変転は、基本的に象徴的、抽象的な概念用語によって捉えられる。
<薮下の訳>
社会構成主義は、現実世界の中で起こることを全体的な関係で理解しようとする。その関係(性)は全く象徴的で概念的である。
Processes and transitions are captured in conceptual terms that are fundamentally symbolic and abstract.
前にも書きましたが、社会構成主義が考えている現実世界は、社会の中の関係性によって常に変化し新しくなってゆきます。この現実の無常性を表現するのに使われている言葉がprocesses and transitionsです。専門家はこれを「生成と変容」と訳出することにしています。ま、今まで片思いだった彼女との関係性が相思相愛になった途端に、世界がクロからピンクに変わるようなものです。あ、ちょっと違うかな?!そういえは祖父江くん!予備校の古典の先生を口説いてはだめですよ!君に熟女趣味があるとは思いませんでした。
さて、薮下は現在、インフルエンザに罹ってしまいダウンしています。今はちょっと熱が下がってきたのでこれを書いてますが、しばらくはブログをお休みします。
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2 Comments
こんにちは、野々垣です。受験が一段落ついて先生のもとにご挨拶に参ろうと思ったのですが、先生がお身体の状態がすぐれないと知りました。しばらく休養を取られるということなのでまた日を改めてお目にかかりたいと思います。その際に、対訳ラッセル等お借りしているものを返しに参ります。丁寧な解説、本当にありがとうございます。
野々垣君!久しぶりですね。薮下は今、インフルエンザでダウンしてます。本当は結果を聞かせてほしいのですが、この掲示板ではダメだよね。残念ながら月曜日の卒業式はアウトです。火曜日から学校に行けます。
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