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原君からの質問(1)

<質問>
これは河合出版の『やっておきたい英語長文500』、6「視覚と認識」の一節です。
I want to give a few more examples to show how what the brain has learned influences the process we call “seeing things.”  Seeing, they say, is believing.  But is it?  An arrangement can be made in such a way that a person looks through a peephole into a bare corridor, so bare that it gives no clues about distance.
河合の訳語はこうです
脳が学習したことはどのように私たちが「物を見る」と呼ぶ過程に影響しているのかを示す例を、あといくつか挙げてみたい。見ることは信じることだと言われている。しかし、そうなのだろうか?物が置かれていないので距離に関する手がかりがまったく得られない廊下を、のぞき穴を通して見ることができるように準備することができる
僕には「見ることができるように準備することができる」が正しい訳語だと思えません。何よりも意味が分かりません。そして、, so bare that it gives no clues about distanceは文法的に直前の文とどのようにつながっているのでしょうか?ネットでもこの英文が結構話題になっているのですが、納得の行く説明が見あたりません。薮下先生の考えを聞かせてください。
<回答>
原君!返事が遅くなってごめんなさい。「見ることができるように準備することができる」って意味不明ですよね。これも『2015年度・大学入試模試・第2回ベネッセ・駿台記述模試』の大問3と同じで、「変な日本語が正解」というパターンです。つまり、決して誤訳じゃないのですが、日本語が崩壊しています。
先ず、「, so bare that~」の文法構造ですが、これは「関係代名詞+be動詞」の省略です。ルール16にある次の例文と同じです。
英語で書かれた本
a book which is written in English
a book written in English
「関係代名詞+be動詞」は省略ができます。だからこの神戸大の英語も「~into a bare corridor, which is so bare that~」と同じことです。でも、コンマがあるので非制限用法のwhich isですから、文をコンマのところで終わらせる必要があります。こんな具合です。
廊下はのぞき穴からのぞくことができる。そして、廊下には物が何もないので、距離感がまったくつかめない。
A person looks through a peephole into a bare corridor, which is so bare that it gives no clues about distance.
コンマには文を区切る働きがあって、非制限用法の関係代名詞と一緒に使うコンマも同じです。だから、and、but、becauseでつないで、先行詞を主語にして文を再開しましたね。その意味で、河合の先生の訳語は間違っています。「物が置かれていないので距離に関する手がかりがまったく得られない廊下」とやると、制限用法の訳になってしまい、コンマの存在が無視されてしまいます
次に、「見ることができるように準備することができる」ですが、これはcanを直訳しただけの変な日本語です。でも、canは「やろうと思えばできる」が原義ですから、神戸大の英語はこうなります。あ、arrangeは「状況をあらかじめ整えておく」が原義で、そこから「準備する」「用意する」「手配する」の意味が派生します。
SがVするように、状況をアレンジしようと思えばできる
An arrangement can be made in such a way thatS+V
S+Vを具体的に訳出すると、
廊下をのぞき穴からのぞくことができ、そして廊下には物が何もないので距離感がまったくつかめないように、状況をアレンジしようと思えばできる
An arrangement can be made in such a way that a person looks through a peephole into a bare corridor, which is so bare that it gives no clues about distance.
そして、この「やろうと思えば」というのは「ifを使わない仮定法」の訳仕方の1つでした。忘れた子はここを参照しておいてください。つまり、canの持つ潜在可能性の中には仮定の意味が含まれているわけです。だから、「~したと仮定しよう」と考えても同じわけです
廊下をのぞき穴からのぞくことができ、そして廊下には物が何もないので距離感が全くつかめないような状況を作ったとしよう
これで分かりましたか?あ、corridorには「あ!廊下にコカ・コーラだ」の記憶術があります。

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