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アラウ君からの質問

<質問>
次の英文は『やっておきたい英語長文500(河合出版)』、4.愛知県立大学の下線部(5)です。
(5)E-mail as we know it allows a high degree of privacy, which, in turn, helps generate more openness.  There are continuing reports from parents about e-mail communication with their children who have left home for college.  Sons and daughters who had little to say to their parents while still in high school, who even now rarely write or phone home, commonly e-mail just to “chat.”
解説の訳はこうなってます。
々が知っているような電子メールは高度なプライバシーを与えてくれ、次にそうしたプライバシーが隠し立てしなくなるのに役立つのである。大学に入って実家を離れた子供との電子メールによる意志の伝達に関する親からの報告が続いている。高校の時でも親と話すことがあまりなく、今でもめったに手が意味書いたり電話をかけてくることがない息子や娘が、ただ「おしゃべりをする」ために、電子メールを送るのはよくあることである。
僕が分からないのは、次の4点です。
1.「我々の知っているような電子メール」がどういうものか分かりません。「我々の知らないような電子メール」と区別しているのでしょうか?
2.「高度なプライバシー」というのが分かりません。日本語ではプライバシーに高低の区別をつけないと思うのですが。
3.「電子メールがプライバシーを与えてくれ、次にそうしたプライバシーが隠し立てをしない状態を生み出す」とあるのですが、「Aして、次にB」のような時間的な経過が本当にあるのでしょうか?
4.解説には「which以下は、直前のa high degree of privacyを修飾する非制限用法の関係代名詞節」とあるのですが、そうすると「プライバシーが隠し立てしない状態を生み出す」ことになってしまいます。そうではなくて、「電子メールが我々にプライバシーを与えることが、私たちが隠し立てをしない状態を生み出す」と考えるのが自然だと思います。whichの先行詞は前文すべてではないのでしょうか?
以上、4点に関する薮下先生のお考えを聞かせてください。よろしくお願いします。
<回答>
アラウ君!なかなか鋭い質問です。君は普段から本をたくさん読んでいるので、英文の構造に忠実に訳出してある受験英語の和訳、言い換えると、ちょっと日本語が崩壊しているような和訳に違和感があるのでしょうね。
1.「僕らが普段使ってる電子メール」
as we know itは確かに「我々の知ってるような」という意味の形容詞節です。でも、決して「我々の知らない電子メール」と対比しているわけではありません。これは「我々が普段使っている電子メール」くらいの意味で、「いつも使っている」から「よく知っている」というわけです。これは河合の先生の訳があまりこなれていないのが原因ですね。
2.「プライバシーがちゃんと保護されていること」
これはアラウ君の言うとおりで、「高度なプライバシー」という日本語はありません。「高度なプライバシー保護」なら意味が通じます。つまり、a high degree of privacyとは「プライバシーがちゃんと保護されていること」くらいの意味です。英文の構造通りに訳出するのが受験英語なのですが、そのままでは上手く日本語にならないものもあります。訳してみて、ちょっと変だなと思ったら、再考して見て、普段自分が使っている日本語を探します。河合の先生がやった「高度なプライバシー」というのは誤訳ですね。これはアラウ君の勝ちです。
3.「電子メールがプライバシーをちゃんと保護し、そして今度はそれによって僕らはどんどん隠し立てしなくなる」
このin turnは、河合の先生がやっている「次に」とか「順番に」ではなくて、「今度は」とか「同様に」の意味ですね。こんな具合です。
子供の時に虐待された人は、今度はしばしば自分自身の子供たちを虐待する。
People who were maltreated as children often maltreat their own children in turn.
だから、これはアラウ君の言うとおりで、当該英文は「Aして、そして次にB」という出来事の順番を言っているわけではなくて、「Aすると、今度は同じようにBする」のように、AとBが同じような程度で繰り返されることを言ってます。言い換えると、「プライバシーが保護されればされるほど、ますます隠し事が出来なくなる」というわけです。ですから、これも河合の先生の誤訳です。
4.「しっかりと保護されたプライバシーによって、僕らはどんどん隠し事をしなくなる」も「電子メールによってプライバシーがちゃんと保護されることによって、僕らはどんどん隠し事をしなくなる」も同じ。
これはなかなか鋭い質問です。結論から言うと、whichの先行詞はa high degree of privacyでもE-mail as we know it allows a high degree of privacyでも、どっちと考えてもOKです。アラウ君の言うとおり、「プライバシーが隠し立てしない状態を生み出す」は変な日本語です。でも、英語の発想はそうなっているのです。つまり、これは英語が大好きな物主語構文なわけです。
しっかりと保護されたプライバシーはさらなる開示性を生み出すことを促進する。
A high degree of privacy helps [to] generate more openness.
確かにこのままでは変な日本語です。でも、前にもここでやったように、モノ主語は副詞化して理由・原因にし、人を主語にして訳し直すとキレイな日本語になりましたね。こんな具合です。
「プライバシーがしっかりと保護されることによって私たちはどんどん隠し事をしなくなるのだ」
「生み出すことをますます促進する」は「だんだんそうなる」ということです。こうすればa high degree of privacyが先行詞でもおかしくありませんね。もちろん、アラウ君の言うとおり、前の文全部を先行詞と考えても悪くありませんよ。では、最後に薮下の和訳を付けておきます。
「僕らが普段使っている電子メールは、僕らのプライバシーをちゃんと保護してくれる。そして今度はそれによって、僕らはどんどん隠し事をしなくなるのだ」
そんなことよりも、ここでも書いたように非制限用法の関係代名詞は、コンマが接続詞and、but、becauseの役割を果たしていることを教えてあげなくちゃいけないと薮下は考えるのですがね。ま、河合の先生の名誉のために一言付け加えておくと、受験英語の和訳は、翻訳とは違い、それを読む学生が英語の構造を追えるように工夫して行われます。つまり、和訳を読めば英語の構造が分かるように、できるだけ英語の構造に忠実に日本語にするわけです。それも、日本語が崩壊しないギリギリの線まで忠実に行います。受験参考書や問題集の日本語がちょっと変なのは、そういうわけです。でも、誤訳になってしまうと失敗です。

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