今日のハッピーアワー(17)
-ねらいが違うような...-
ヤッホーブルーイングが作る「僕ビール、君ビール。」だ。若い世代のビール離れがある中で、20~30歳代の人を引きつけようと考えて開発したという。「セゾンビール」だと謳っている。
はて、セゾンビールという言葉は聞いたことがあるが、どういう定義のものかは、はっきりとした知識がないので調べてみた。「農閑期にだけ造られるのでセゾンビール(季節ビール)と呼ばれ、主にワロン地方(エノー州、ナミュール州、リュクサンブール州の一部)で造られています。」という情報が得られた。ならば、オクトーバーフェストでのフェストビールみたいなものか、と少し合点しかけると、「通常、色々な醸造所で造られている、イースターやクリスマスなどの季節ビールとは別の意味合いになります。」という記述があったので、じゃあ何よ、というわけで更に調べると、ベル通というサイトに「セゾン(Saison)とは、シーズン、つまり「季節」のことです。なので、名前の由来を、「農閑期だけに造られるビールなので、セゾンビール(季節限定ビール)と呼ばれる」としている説明が多いようですが、実は、もうひとつの説も。セゾン(Saison)の動詞形は、フランス語ではassaisoner(アセゾネ)。英語でも、Seasonは動詞として使えば、「スパイスなどを使って味をつける、調味する」というような意味。仕事中にゴクゴク飲むビールとしては、アルコール度数は高くは出来ないわけですが、冬に仕込んで夏までもたせねばならない。そこで、ドライホッピング法を用いたり、天然の保存料であるハーブやスパイスを使ったりして、「assaisoner」したことからこう呼ばれるようになったというものです。」という記述があった。いやあ、あいまいなのね。これじゃあ“農閑期だけに作られる”というところを抜けば、ヒューガルデンなどのベルギービールに共通するところだし、IPAにも通じるじゃないかと。
結局「セゾン」というのは、カテゴリーを意味するものではなく、ビールの歴史的、文化的説明になっている言葉なのだという解釈を筆者はすることにしたのだが、飲んだ感想からすると、上の記述にある後者の説を支持する。
このビールには、とぼけたネーミングとポップなカエルの絵が印刷されているので、警戒心なく、酎ハイなどを飲んでいる若者がうっかり手を出しそうな親しみやすさがある。その点ではよく考えられていると思うが、中身はかなりしたたかなものである。香りがかなり鮮烈。“青い果実”などと形容している人がいるが、“山椒の若芽”の方が近いと筆者は思う。そして苦み。これはかなり強い。IPAのそれを思い浮かべる。
こんな取り合わせがなかなか良い。
さて、ビールを敬遠している若者がこのビールこれをうまいと思うだろうか。物珍しさ、話題性から手に取る人はそれなりにいるだろうとは思うが、これによって、ビール離れに一手を打つというのはまったく違うと思う。若者のウイスキー離れに歯止めをかけようと、ハイボールを流行らせるキャンペーンを打って、ソコソコ成功したのとは訳が違うと思う。このビールは、われわれ“経験を積んだ”ビール飲みにこそうけるものではないか、クラフトビールによって、ビールの奥深さ、ビールにはいろんな旨さがあることを知って、はまった人が待っていたビールだというのが筆者の言いたいところだ(だから、限定と言わずに、これからも作ってね)。
こいつは、例えるなら、「ふなっしー」だね。
・Toshihiro Kanenobu
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