渋木君からの質問(その2)
<質問>
前の質問の回答は良く分かりました。ありがとうございました。ところで、同じ2011年度の京都大学の長文Ⅱでもう1つ質問があります。
Physics has a somewhat unfair reputation for being hard, impractical, and boring. Hard? Perhaps. Impractical? Definitely not. Indeed, when people try to “sell” physics to the public, it is almost always in terms of how it can be used to build bridges or launch rockets―that is, how physics is ultimately the foundation for engineering or chemistry.
この英文の赤本の和訳はこうなってます。
物理学は、難しくて非実用的で退屈だという、いくぶん不公平な評判をいただいている。難しい?かもしれない。非実用的?断じて否。確かに、人が物理学を一般大衆に「売り込もう」とするとき、たいては橋を建造したりロケットを打ち上げたりするために物理学をどう使うかという観点からなされる。つまり、物理学は突き詰めてゆくと、いかに工学や科学の基礎となっているのかということなのだ。
僕の質問は、ダッシュ(―)以下はthat is [to say]があることから、同格だと思うのですが、赤本の訳語の「つまり」以下は何かと同格にはなってないように思うのですが。つまり、どう考えても「橋を建造したりロケットを打ち上げたりするために物理学をどう使うか」と「物理学は突き詰めてゆくと、いかに工学や科学のきそとなっているのか」が同格だとは僕には思えないのですが、薮下先生はどう思いますか?
<回答>
渋木君!これは確かに君の言うとおりで、赤本の訳語が間違ってます。ダッシュの直後にthat isがあるので、how it[=physics] can be used to build bridges or launch rocketsとhow physics is ultimately the foundation for engineering or chemistryとは同格関係にあります。でも、赤本がやってるようにhowS+Vを「いかにSがVするか」と訳出すると、おかしなことになります。
⊿専門家以外の一般人に物理学の良い所を「売り込む」のは大抵、いかに物理学が工学や科学の基礎となっているのかという観点からなされる。(×)
It [=To “sell” physics to the public] is almost always in terms of how physics is ultimately the foundation for engineering or chemistry.
「いかに物理学がその基礎となっているかという観点」は変な日本語です。そうじゃなくて、このhowは接続詞で、こんな具合で使います。
⊿彼はテニスでトムに勝ったという事実(次第)を私に話した。
He told me how[=the fact that] he beat Tom at tennis.(LIGHTHOUSE・研究社)
このhowはthe fact that、または単純にthatと置き換えることが出来ます。だから、京都大学のこの英文は次のように和訳しないといけません。
専門家以外の一般人に物理学の良い所を「売り込む」のは大抵、物理学が工学や科学の基礎になっているという[事実の]観点からなされる。
この京大の英文の著者は生真面目で、in terms ofの目的を2つともhow+文で揃えたかったのでしょう。でも、同じhowなのですが用法が違っているわけです。赤本の和訳は、君の言うとおり誤訳です。
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