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車戸くんからの質問(9)

<質問>
京都大学赤本の正解に納得できないところがあります。問題は1995年度[2]の下線部(3)です。
In part the lure has been the dramatic circumstances of the city’s death, in part the fact that in Pompeii we can see an ancient city caught at a certain moment at the height of its career, showing its qualities unspoiled by the passage of time.
赤本の訳語はこうなっています。
人々を発掘にかりたてたのは、一つにはこの年の滅亡の劇的な状況であり、また一つにはポンペイの中に古代都市がその歴史の最盛期のある瞬間に捉えられ、時間の経過によって損なわれることなくその特徴を保持しているのを見ることができるという事実である。
僕が納得できないのは, showingの訳です。解説には「showing以下はan ancient cityを意味上の主語とする分詞構文」とあるのですが、付帯状況分詞構文なら「~しながら」か「~してそして・・・」のなずなのに、その訳語がありません。それに、どう見てもshowが訳出されていないように思われます。さらに、付帯状況分詞構文に意味上の主語なんてあるのでしょうか?
<回答>
ここに下線を引いてくる京都大学恐るべし!です。東大のように反射的に解答ができない英文を出題しますね。一見すると付帯状況分詞構文だから、車戸君の言う通りに「~しながら(同時)」か「~してそして・・・(連続)」で訳出してみると、ちょっと変だなということに気がつきます。こんな具合です。
同時僕らが時間の経過によって劣化することなくその質を保持したままの姿を見せながら、古代都市がその歴史上で最も繁栄した時期にある一瞬で固まってしまったのを見ることができます。
連続] 僕らは古代都市が、その歴史上で最も繁栄した時期にある一瞬で固まってしまったのを見ることができ、そして僕らが時間の経過によって劣化することなくその質を保持したままの姿を見せるのである。
パッと見では何となく上手く訳せたような気がしますが、この2つが決定的におかしいのは「僕らが劣化してない姿を見せること」です。これは車戸君の言うとおりで、分詞の意味上の主語は原則的に主節の主語に一致していないといけないからです。
その赤ん坊はテレビを見ながら笑っていた。
The baby was laughing, watching TV.(同時)
その赤ん坊は僕を見て、そして笑った。
The baby looked at me, laughing at me.(連続)
この付帯状況分詞構文は、分詞の意味上の主語は2つとも、主節の主語であるthe babyじゃないといけません。もし分詞の主語と主節の主語が違っている場合は消してしまっては意味が通じませんからそのまま残しておきます。こんな具合でしたね。
天気が良ければ、僕らは週末に海辺でバーベキューをします。
Weather permitting, we are going out for a BBQ at the beach this weekend.
場合によっては、主語が違っていても消してしまう場合もありました。でも、これは慣用表現に限られていましたね。
空模様から判断すると、明日は雨になりそうだ。
[I]Judging from the look of the sky, it is going to rain tomorrow.
分詞の意味上の主語は判断している「私」、後半の主節文の主語は「天気・天候のit」だから主語が違います。でもIは慣用的に省略されてなくなります。そして、ここがポイントなのですが、なぜ消えてしまうのかというと、慣用表現なのでIが消えて無くなっても全く支障がないからです。分詞構文は文にスピード感を持たせるための省略表現です。でも、省略してしまって文意が通じなくなってしまっては、元も子もないわけです。特に、文の途中に現れる付帯状況分詞構文は、分詞の意味上の主語と主節の主語とが一致していないといけません。そうでないと、上でやったように何が言いたいのかさっぱり分からない文になってしまいます。つまり、分詞構文の省略技法がなりたつには、省略前の元の文構造がちゃんと分かるくらいシンプルじゃないといけないのです。この赤本の解説者が分かっていないのはまさにこの点ですね。だから「showing以下はan ancient cityを意味上の主語とする分詞構文」なんてあり得ないわけです。もしこれが付帯状況分詞構文だったら、分詞の主語はweじゃないといけませんからね。
じゃあ、このshowingは何かというと、これは知覚動詞seeの目的格補語、言い換えると「SVOC」の「C」に当たる構成要素と考えるのが自然です。そしてWe can see an ancient cityのSVOまでが共通で、「C」が2つあると考えるわけです。
僕らは古代都市がその歴史上で最も繁栄した時期のある一瞬で固まってしまったのを見て取れる。
We can see an ancient city caught at a certain moment at the height of its career.
僕らは古代都市が時間の経過によって劣化することなくその質を保持したままの姿を見せているのを見て取れる。
We can see an ancient city showing its qualities unspoiled by the passage of time.
不思議なのは、この解説者はshowingを分詞構文だと断定しておきながら、訳語はちゃんと主格補語で訳出しているところです。つまり、解説と訳語とが一致していないわけですね。それに、車戸君の言うとおりshowの訳語がどこにも見あたりません。ま、この人は訳出上都合の悪いものは無かったことにしてしまうクセがあるようです。これは英文和訳では禁じ手で、分からない英文に出会ったときに、勝手に日本語を操作しては絶対ダメでしたね。そんなときは、もう一度英文に立ち返って、英語の構造に忠実な訳語を考えるのがベストです。解説者がやったように、英語を無視して日本語に手を加えて誤魔化すのは絶対に止めましょうね!

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