Skip to content

車戸くんからの質問(5)

<質問>
ついでにもう1つ僕の和訳を添削してくださいませんでしょいうか?
Four and a half billion years ago, the earth was formed.  Perhaps a half billion years after that, life arose on the planet.  For the next four billion years, life became steadily more complex, more varied, and more ingenious, until, around a million years ago, it produced mankind―the most complex and ingenious species of them all.  Only six or seven thousand years ago―a period that is to the history of the earth as less than a minute is to a year―civilization emerged, enabling us to build up a human world, and to add to the marvels of evolution marvels of our own: marvels of art, of science, of social organization, of spiritual attainment.  (大阪大)
ほんの6、7千年前、すなわち地球の歴史を1年としたとき1分にも満たない期間に、文明が起こって、それによって人間世界を形成することができ、そして進化の驚異だけじゃなく、私たち自身の驚異、すなわち芸術、科学、社会組織、精神的達成の驚異もつくりだすことができた。
<回答>
車戸くん!とってもいいですね!add to B Aを「BにAを加える」とやらなかったところがすばらしい!!河合出版の問題集の正解と比べてみると、その違いがよく分かります。
河合塾の先生が書いた正解
ほんの6、7千年前―これは、文明が出現し、その文明によって我々は人現の世界を築き上げ、進化の様々な驚異に、我々人間独自の驚異、すなわち、芸術、科学、社会組織、精神世界の面での驚異を付け加えることができるようになった。
この「文明によって僕らは驚異に驚異を付け加えることができるようになった」って一体何なのでしょうかね?全く意味不明です。大阪大を受験してこんな答案を書いたら本当に合格させてもらえるのでしょうか。薮下が採点官だったら絶対に減点しますがね。では、このadd to B Aについての河合の解説者の説明を見てみましょう。
add to the marvels of evolution marvels of our ownでは、自動詞の<add to A>「Aを増大[増加」させる」と読まないこと。そう読んでしまうと、名詞の,marvels of our ownが浮いてしまう。ここでは、他動詞を用いた<add A to B>「AをBに加える」という表現を前提として、Aが文末に移動した結果、<add to B A>という語順になっていることを見抜くことがポイント。
先ず、これを自動詞のadd to Aだと考える子は大阪大は受験しないでしょう。そして、解説者はadd A to BのAが後ろに移動したことを見抜くのがポイントだと高らかに宣言してますが、これも全然違います。addはこんな風にも使うのですよ!
彼女はピアノが弾けるだけじゃなく、ヴァイオリンが弾ける才能ある。
She can play the piano and, added to this ability, she can play the violin.
そう!このadd to B Aというのはnot only B but also Aのバリエーションの1つで、別にAをわざわざ移動させたわけではありません。そして、もう1つ気になるのが、車戸君も使っている「進化の驚異」とか「人間独自の驚異」という訳語です。ま、これは減点されるほど深刻な誤訳ではありません。なぜなら次の様な表現は普通に使いますからね。
自然の驚異
marvels [or wonders] of nature
確かに自然界は驚きでいっぱいです。でも、marvelがmarvelous、wonderがwonderfulになると「すばらしい」の意味になるように、marvelの中には「すばらしいもの」とか「すばらしい結果」の意味があります。こんな具合です。
現代社会が生み出したすばらしい結果(現代社会に存在するすばらしいもの
marvels[or wonders] of modern world
コンピュータや携帯電話は現代社会のすばらしい産物ですよね。もし、marvelが単数形ならば、現代社会の中にある色んなすばらしいものではなく、現代社会自体のすばらしさを表現します。 こんな具合です。
すばらしい現代社会
marvel of modern world
だから、この大阪大のmarvels of evolutionやmarvels of our own (making)も「すばらしいもの」で訳出すると分かりやすくなります。
⊿進化がもたらしたすばらしい結果(もの)
marvels of evolution
⊿僕らが自分で作り上げたすばらしい結果(もの)
marvels of our own
あ、of one’s ownを解説者は次の様に説明しています。
marvels of our ownでは、<of one’s own>「~自身[独自」の」という定型表現が用いられており、「人間独自の驚異」という意味。
いえいえ、そうじゃありません!これはmarvels of our own making、marvels of our own creationの省略表現で、決して定型表現じゃありませんよ!だって、定型のof one’s ownはこんなやつです。
⊿僕は自分の車を買おうと思っている。
I’m thinking of getting a car of my own.
さて、じゃあこの下線部はどうなるかというと、こうなります。
薮下の解答例
僕らは文明のお陰で、進化がもたらしてくれたすばらしいものだけでなく、僕ら自身が作り上げたすばらしい結果、言い換えると芸術や科学や社会の仕組みや宗教も手に入れることができたのだ。
さて、車戸君の答案ですが、「進化の驚異だけじゃなく私たち自身の驚異も作り出すことができた」の「AばかりじゃなくBも」は高く評価できます。これは河合塾の先生の訳語よりもずいぶん良いと思います。でも、このままでは「進化の驚異」も僕ら人間が作り出したことになってしまい、まるで僕らが神様みたいなことになってしまいます。そして、「精神的達成」はちょっと変ですね。河合の先生も「精神世界の面」と和訳してますが、薮下がspiritualと聞いて思い浮かぶのはやっぱり宗教です。spiritual attainmentなんて表現は初めて目にしますが、宗教も人間が作り出したものですから芸術や科学と同列に並べてもおかしくありません。
それにしても、この問題集を勉強して本当に英語の力はつくのでしょうかね?!昔、河合塾で教えていた者として、とっても複雑な気分です。がんばれ!河合塾!

Post a Comment

Your email is never published nor shared. Required fields are marked *
*
*