夏のアブラゼミ 第15日目 A of Bを超キレイに訳出すには⑥
「夏のアブラゼミ」15日目です。立教大の後半を片付けてしまいましょう。青い部分が残ってました。
【問題】
People often say of their childhood, “We were poor, but we didn’t know it.” They may not be exaggerating. But what they are really saying, I think, is that they knew who they were, they had the security of belonging somewhere. Why else do so many of us want to go home again? When we give ourselves to a place, we put it on, the surroundings included, as if it were our very own clothing. We are truly “in place.”
<立教大学>
many of usは「Bの中のA」で「部分のof」です。Aのところに部分や数量を表す語句が来ていたら、この「部分のof」だと考えて良いでしょう。こんな具合です。
⊿彼らの(内の)1人が
one of us
⊿彼らの(内の)何人かが
some of us
⊿我々の(内の)多くの者が
many of us
⊿彼らの(内の)大部分が
most of us
⊿彼らの(内の)全員が
all of us
だから最初の英語はこうなります。あ、go home againを「また家に帰る」とやると意味不明です。だって、家がある限り、僕らは必ず家に帰りますからね。もし「僕らの内の多くの者がまた家に帰る」にすると、「僕らの中にはホームレスもいる」ということになってしまいます。
⊿そうじゃなければ、なぜ僕らの(内の)そんなに多くの者がまた故郷に帰りたいと思うのか。
Why else do so many of us want to go home again?
次に、give oneself to Aで「Aに身を任せる」とか「Aに浸りきる」の意味。でもgive ourselves to a placeを「僕らが場所に身を任せる」とか「僕らが場所に浸りきる」などとするとやっぱり意味不明です。これは「Aの中に自分自身を投げ出してAと一体化する」くらいの意味なので、「僕らがその場所に馴染む」という訳語が思いつけば上等です。ま、give oneself to a placeなんて普通は言いませんけどね。
the surroundings includedは「付帯状況のwith」が省略されてると考えるのが簡単です。つまり、with O+Cで「OがCの状態」の意味だから、この英語はこうなります。付帯状況のwithについて知りたい子はここやそこで勉強してください。
⊿周りの環境が含まれている状態
with surroundings included
あ、「as if S+V」は仮定法で、「まるでSがVするように」、itはthe placeだから、こうなります。あ、as ifのことをもっと知りたい子はここを参照してみてください。
⊿まるでその場所がまさしく自分が着る服であるかのように
as if it were our very own clothing
in placeは文字通り「その場所(の中)にいる」です。せっかく「” “」が付いているので、ちょっと格好をつけて訳すと「その場所に溶け込んでいる」くらいが良いでしょう。これらを考慮すると、後半の和訳はこうなります。
【全訳例】
僕らがある場所に馴染むとき、僕らは、周りの環境と一緒に、その場所を身にまとうのだ。それはまるでその場所がまさに自分の服のようなものだ。僕らはまさにその場所に溶け込んでいるのだ。
しかし、日本の大学の先生は、どうしてこんな「ちょっと変わった英語」を入試問題として使うのでしょうかね?おかしいでしょ!?「場所を身に纏(まと)う」なんて表現、普通使いますか?薮下は今まで一度もそんな言い方を使ったことないですがね!
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This was written by
yabu. Posted on
木曜日, 8月 29, 2013, at 7:47 AM. Filed under
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4 Comments
最近某県で「自殺」を「自死」という表現に改めたというニュースを聞きました。
英語で自殺するというと”commite suicide”と言いますが矢張りここでの”commite”は「罪を犯す」といった意味で使われるのでしょうか?
キリスト教では自殺は罪ですから英語表現もそれに連れなってcommitを使うと私は考えました。
また、Weblioで自死を例文検索すると全く出てきません。
欧米では自死といった概念はないのでしょうか?
直接、受験英語とは関係しませんが良ければお答えください。
ABC君の言うとおりで、キリスト教文化圏では自殺は「罪」です。ですから、commit a crime(罪を犯す)と同列にcommit a suicide(自殺する)があります。島根県が「殺」には作為的な犯罪のイメージがつきまとうので「死」に換えたことは、心情的には理解できますが、現実としては言葉遊びの域を出てません。「自殺」を「自害」、「自死」、「自決」と読み替えてところで、周りの人間が名札を付け変えただけのことで、本人がその言葉を選んだわけではないからです。「自死」には死を自分で選択した覚悟や決意のようなものが込められていますね。じゃあ、欧米人は自然死を忌避し、自分の命を自分で絶つことはないのかというと、そうでもありません。たとえば古代ローマでは「自殺」のことをfall on one’s swordと言ってました。切腹と同じで、立ててある自分の剣に倒れ込んだと思われます。他にもdie by one’s own handなんて言い方には、現実から逃避した卑怯者という悪いイメージはなく、自然死を忌避して自ら命を絶つという「決意」が表現されています。「自死」がweblioに載ってないのは、単なる文化的な差異性からの必然で、「自死」に1対1で対応する英語がないだけです。
毎回、勉強させていただいております。
We are truly “in place.”を「われわれはまさに“場所を着ている”のだ」と、このinを「着用」と解してはダメでしょうか?
学習生さん!初の投稿を歓迎いたします。とっても面白い解釈ですね。僕も「着用のin」の解釈もアリだと思います。
⊿赤い服を着た女
the woman in red
もともとin placeはin the right placeの省略形で、「あるべき場所」とか「決まった所」、「元の位置」が原義です。だから、We are in placeは「僕らはいるべき場所にいる」の意味。それを「洋服を身にまとう」に例えているわけですから、in placeは上のin redも掛けていると考えるのが面白いですね。なかなかやりますね!
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