夏のアブラゼミ 第7日目 and、but、orが結ぶものを見極めろ!⑤
「夏のアブラゼミ」の最終回です。今回は広島大学の問題に出てくる「接続詞+that」で遊びましょう。
【問題】
Although I know of no scientific grounds to support my theory, I do not believe that a sense of humor is something that a person just is or is not born with, nor that it cannot be developed. My limited study of the mind and its potential suggests to me that we could all develop a sense of humor, if we but tried.
<広島大学>
「know人」なら「人のことを直接知っている」、「人とは知り合いだ」であるのに対して、「know of 人」になると「人のことを間接的に知っている」、「人のことを読んだり聞いたりしたことがある」の意味になります。「人」が「事柄」になっても大体同じ意味で、「know of 事柄」は「その事柄に関して読んだり聞いたりして知っている」くらいの意味になります。このofはaboutと同じ「事柄・関連のof」です。
また、to support my theoryの直前には名詞のgroundsがあるので、この to は「不定詞の形容詞用法」でETの法則に従っていると考えられます。あ、ETの法則についてはここを参照しておいてください。
⊿今日読む本
a book to read
これと同じ構造で・・・
⊿自分の理論を裏付ける科学的な根拠
scientific grounds to support my theory
これらのことを考え合わせると、前半の和訳はこうなります。
【全訳例】
自分の理論を裏付けるための科学的な根拠がないことなど分かってはいるのだが
次に、文の後半ですが、英語は自分の意見が「肯定」か「否定」かを文頭で相手に示唆しなくてはなりません。一方、日本語はそれが文末に来ます。だから、自分の意志を日本語で相手に伝えようとすると、それが「肯定」なのか「否定」なのかはその文を最後まで読まないと分からなということになります。ま、どちらが良いか悪いかという話ではなくて、I don’t think that~を訳出するときには、この英語と日本語の構造の違いを意識しなさいということです。つまり、I don’t think that~を「~だとは思わない」と訳すよりも「~ではないと思う」と訳した方が自然な日本語になります。なぜなら、「~だとは思わない」は文頭で賛否を露骨に明言する英語型のままの訳語だからです。一方、日本語は相手に気を遣いながらやんわりと文末で賛否を匂わせますからね。日本語と英語の否定の仕方の違いに興味がある子はここを参照して見てください。
さあ、最初の接続詞 or が出てきますね。今までやってきたように、直後に注目するとis not、直前にもisがありますから、主語が共通のa personでorはisとis notを結んでいることが分かります。こんな具合です。
⊿人が一緒に持って生まれてくるもの
something that a person is born with
isとis notを入れ替えると ・・・
⊿人が一緒に持って生まれてはこないもの
something that a person is not born with
これらを考え合わせると、最初の英文の和訳はこうなります。
【全訳例】
自分の理論を裏付けるための科学的な根拠がないことなど分かってはいるのだが、ユーモアのセンスは人が生まれながらにして持っているとか持っていないといったものじゃないと私は思う。
さて、この広島大学の問題の急所が次のnor thatの訳出です。あ、肯定文ならS is A or B(SはAかBかのどちらかだ)、否定文になるとS is not A nor B(SはAでもBでもどちらでもない)になりましたね。つまり、norはorの否定バージョンなわけですから、いつもの「直後に注目して、直前に同じ形を探せ」が使えるわけです。
じゃあnorの直後に注目して見ると「that+文」が見つかります。直前に「that+文」を探すと、あれれ??「that a person is or is not~」もthat+文だし、その前の「that a sense of humor is~」もthat+文です。困りましたね。norが結んでいるのはthat a person is or is not~なのでしょうか?それともthat a sense of humor is~なのでしょうか?
ここでもう1度じっくりとnorの直後の文に注目します。直後文that it cannot be developedの主語はitですよね。ここが肝心なのですが、著者がこの英文で一番言いたいことを、その文の「テーマ」とか「主題」と言います。そして、普通は段落の一番最初の文で「名詞」として提示され、次にそれが「代名詞」化されてゆきます。つまり、このitは著者がこの英文で一番言いたい「テーマ」である可能性が高いわけですね。そこから、このitはこの文章のテーマであるa sense of humorだと考えられます。ならば、直後文はthat a sense of humor cannot be developedなのだから、直前文の主語もa sense of humorじゃないかと期待できます。だから、norが結んでいるのはthat a sense of humor is somethingの方だと分かります。つまり、「~じゃないと思う」と著者がいっているものが2つあるということです。
【全訳例】
自分の理論を裏付けるための科学的な根拠がないことなど分かってはいるのだが、ユーモアのセンスは人が生まれながらにして持っているとか持っていないといったものじゃないし、育てることができないものじゃないと私は思う。
さっきも言ったように、S is not A nor Bは「SはAでもBでもどちらでもない」です。ま、普通はnotがneitherになって、S is neither A nor Bの形の方をよく使いますがね。
⊿彼は決して物を借りないし、貸すこともない(物の貸し借りはしない)。
He never borrows nor lends things.
これを見ても分かるように、nor Bを和訳するときにはBをちゃんと否定しなくてはなりません。つまり、「彼は決して物を借りないし、また物を貸します」では意味不明なわけです。本文のnor that it cannot be developedも否定にしてやって「ユーモアのセンスは育てることができないものじゃない」と訳出します。ま、2重否定ですから「ユーモアのセンスは育てることができる」とやった方が綺麗な日本語にはなりますがね。
【全訳例】
自分の理論を裏付けるための科学的な根拠がないことなど分かってはいるのだが、ユーモアのセンスは人が生まれながらにして持っているとか持っていないといったものじゃないし、育てることができるものだと私は思う。
後半の英文はまたの機会にやっつけましょう。1週間よく頑張りましたね。解説は何度か読み返して、英語を読むときの「コツ」を会得しておいてください。あ、明日からは「リアル補習」が始まりますが、こっちの方も頑張っていきまっしょい!
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This was written by
yabu. Posted on
日曜日, 8月 18, 2013, at 6:26 AM. Filed under
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4 Comments
今後の勉強の仕方や 夏休みの経過など相談したいことがあるので 先生の都合のいい日にちを教えてください!
欧米にはいじめがないとお書きですが、先程早稲田 商 2002の問題に欧米でのインターネットを使ったいじめを扱った文章がありました
ある少年がネット上にデブだのホモだのと書かれたウェブページが開設されたという内容で、
専門家の一人はよくあることで驚く事ではないという立場でした
また、昔スティーヴンキングのITという小説にいじめのシーンあったのを覚えています
他にもケッチャムの小説に、実際に起きた事件を取り上げたものがありましたが、
いじめの延長で少女が殺される話でした
本当にいじめは日本特有のものでしょうか
薮下の書き方が良くなかったと反省しています。「いじめ」という表現の適応範囲はとても広いので、全てが「いじめ」に当てはまってしまいます。アメリカでは色んな民族が一緒に暮らしていたり、歴史的にアフリカから連れてこられた黒人がいたりするので、民族が違うという理由で、また人種が違うという理由で「いじめ」が起こります。これがアメリカ社会です。僕もアメリカでアジア人だという理由で露骨に「いじめ」られたことがあります。でも、そんなアメリカでも同じ民族や人種の間で「いじめ」るようなことはほとんどありません。これは一種の連帯感や仲間意識がそうさせるみたいで、多民族国家、異人種国家の宿命のようなものだと言われます。同じ日本人同士で「いじめ」合うのをアメリカ人(特に嫁さんのリンダ)は不思議に思うようです。
いつでも職員室に来てください。待ってますよ!
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