ReadingDrill第11回(2)
去年のセンター現代文、大問1の問2はこんな問題です。
傍線部「『教えて君』よりも『教えてあげる君』の方が、場合によっては問題だと思います」とあるが、それはなぜか。その理由の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから1つ選べ。
ここで傍線部の様に言える「理由」を自分の頭で考えてはいけません。どんな「内容一致問題」も、正誤判定の根拠になるのは「主張文」です。 だから、「主張文」と選択肢を比較すれば良いわけです。 ま、これについては次回詳しく説明します。
「テーマ」は「啓蒙」です。主張文は「啓蒙のベクトルが落ちてゆく」こと、それが具体化されたものが「(教えて君と教えてあげる君の)両者が一緒になって、川が下流に流れ落ちるように、よりものを知らない人へ知らない人へと向かってゆく」ことでした。だから、マーカも「啓蒙」です。選択肢の中に「啓蒙」を探します。ま、普通は「啓蒙」がそのまま出てくることはなくて、巧妙に書き換えられています。
テーマ=「啓蒙」→「知的レベルが向上すること」
ね!ちょっと形が変わっています。じゃあ、次に「主張文」が選択肢ではどうなっているのかを見ます。
主張文=「啓蒙のベクトルが落ちてゆく」→「知的レベルが向上していかない」
あ、ここで注意して欲しいのは具体化された主張文の「教えて君と教えてあげる君の両者が一緒になって」知的レベルが下がってゆくという部分です。それを赤色で強調するとこうなります。
主張文=「両者の啓蒙のベクトルが落ちてゆく」→「両者の知的レベルが向上していかない」
さて、ここまで来たら後は「両者の知的レベルが向上していかない」と書いてある選択肢を探すだけだから簡単です。
①「教えてあげる君」は「教えて君」に対して無責任な回答をすることによって、質問をただ繰り返すばかりの「教えて君」の態度の安直さを許してしまっているため、「教えて君」の知的レベルを著しく低下させる弊害をもたらすことにもなるから。
②「教えてあげる君」は「教えて君」に知識を押しつけるばかりで、その時点での相手の知的レベルに応じた回答をしているわけではないため、「教えて君」をいたずらに困惑させてしまい、自らの教える行為を無意味なものにしてしまうことにもなるから。
③「教えてあげる君」は自身の知識を増やそうとすることがなく、「教えて君」の知的好奇心を新たに引き出すこともないため、「教えて君」もまた「教えてあげる君」と同様の状況に陥り、社会全体の知的レベルが向上していかないことにもなるから。
④「教えてあげる君」は社会全体の知的レベルを向上させなければならないという義務感にとらわれており、「教えて君」の向学心に直接働きかけようとして教えているわけではないため、自分自身の知的レベルが向上していかないことにもなるから。
⑤「教えてあげる君」は「教えて君」を導くことで得られる自己満足を目的として教えているに過ぎず、「教えて君」の知的レベルを向上させることには関心がないため、「教えて君」と「教えてあげる君」との応答がむだに続いてしまうことにもなるから。
①は「教えて君」の知的レベルが下がるだけだと言ってるのでダメ。②は主張通りに知的レベルが下がるとは書いてないので論外。③は「教えて君」と「教えてあげる君」を足したものが「社会全体」に書き換えられていることに気がつけば、これが正解だと分かります。④は「教えてあげる君」の知的レベルが下がるだけだと言っているのでダメ。⑤も②と同じで、主張の知的レベルが下がるが出てこないので論外。以上で比較検討終わり!ね、簡単でしょ!
現代文が苦手な子は、選択肢全体を漫然と比較するから、選択肢が全部同じことを言っている様に思えてしまうのです。ポイントは選択肢の中で「テーマ」が主張通りに正しく扱われているかどうかです。ここが選択肢の比較ポイントになるのです。この様に、選択肢を見比べるときには「比較ポイント」をハッキリさせることが大切なわけです。選択肢を見比べるときに注意すべき点を書き加えておきます。
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