「Basic」って何?(5)
「システム英語長文」がおかしいという話をしています。前回は2 Schools in the United Statesの第2段落の「学科の科目」という訳語が変だというお話でした。今回は第4段落の最終文の「, which」を考えてみましょう。
Americans believe that if children are taught to reason well and to research well, they will be able to find whatever facts they need throughout the rest of their lives. Knowing how to solve problems is considered more important than the accumulation of facts, which often grow obsolete.
もし子供たちがしっかりと考えて調査することを教えられれば、残りの人生においてずっと、必要とするどんな事実でも知ることができるだろうと、アメリカ人は信じている。事実はしばしば古くなるものであり、事実を蓄積することよりも、問題の解決方法を知ることの方がより重要だと考えられている。
普通の関係代名詞は直前の名詞(先行詞)を限定的に飾ります。関係代名詞の後ろに続く不完全文の働きは、直前の名詞を飾る形容詞としての役割に限定されます。だから、普通の関係代名詞を「制限用法」とか「限定用法」と呼びます。そして、コンマのない普通の関係代名詞はそれが導く飾りから先に訳します。こんな具合です。
⊿彼には医者をやってる3人の息子がいる。
He has three sons who are doctors.
でも、関係代名詞の直前にコンマが付くと文が一度そこで区切れてしまうので、直前の名詞だけを飾るという限定が解除されます。あ、「, which」の先行詞が直前の名詞だけに限定されなくなるのもそのせいです。だから彼には息子が全部で3人しかいないことが確定します。先ず、非制限用法の場合はコンマの所で文を区切ります。次に、後ろの文と接続詞で結んでやります。そして、先行詞を代名詞化してやって後ろの文を続けます。こんな具合です。
⊿彼には息子が3人いる。そして、彼らは医者をやっている。
He has three sons, who are doctors.
=He has three sons, and they are doctors.
関係代名詞の前にコンマが付くと限定は解除され、形容詞としての用法に制限されなくなるので、この用法を「非限定用法」とか「非制限用法」と呼びます。あるいは、接続詞を挟んで2つの文が流れるように続くので「継続用法」とも呼びます。
論理を展開させるには、and(並列・付加)だけでなくbecause(順接・因果)やbut(逆接)も必要になります。こんな具合です。
⊿僕はこのギターが気に入っている。なぜなら音色がとても良いからだ。
I like this guitar, which has a very good sound.
=I like this guitar, because it has a very good sound.
⊿彼には3人の息子がいた。しかし、息子たちは家業を継がなかった。
He had three sons, who didn’t take over his business.
=He had three sons, but they didn’t take over his business.
国立大学2次試験の下線部訳にこの「非制限用法」の関係代名詞が出てきたら、
①「文を区切る」
②「and, but, becauseの接続詞でつなぐ」
③「先行詞を代名詞化したものから次の文を始める」
の3つをやっていないと減点されます。非制限用法がちゃんと理解できていることが採点官に伝わらないからです。
そのことを考えて「システム英語構文」の和訳を見てみましょう。
【赤本の訳語】
事実はしばしば古くなるものであり、事実を蓄積することよりも、問題の解決方法を知ることの方がより重要だと考えられている。
【薮下の正解例】
事実を覚えることよりも、問題の解決方法が分かることの方が大切だとアメリカ人は考えています。なぜなら、事実が時代遅れになってしまうのはよくあることからです。
薮下が採点官なら、残念ながらこの答案に満点はあげられません。それに、「事実を蓄積する」って意味が分かりません。さらに言うと、子供たちが学校で教わるのは「しっかりと考えて調査すること」ではなくて「物事を正しく判断し探求すること」です。一体何をしっかりと考えるのでしょうか?専門家の調査・研究の方法なんて教わりますか?さらに、老人ではなくて子供たちに対して言うのなら「残りの人生」じゃなくて「これからの人生」でしょう。自分で正しく和訳できない英文をBasicに分類してはいけません!
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