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林君からの質問(3)

河合出版の『やっておきたい英語長文700』とZ会の『リンガメタリカ』に共通して出てくる英文。
The nation has begun to have a decreasing importance as individuals and communities, gaining access to globally shared knowledge and culture, are affected by economic realities that come and go over the boundaries of the state.
河合出版の訳語
個人や地域社会が、世界規模で共有されている知識や文化を利用できるようになり、国境を越えて行き来する経済の実態に影響を受けているため、国家は重要性を低下させるようになった。
Z会の訳語
個人と地域社会が世界規模で共有されている知識や文化を利用する際に、国境を越えて行き来する経済的現実に影響を受けるにつれ、国家の重要性は減少し始めている。
じゃあこの「, -ing」は何かというと、「付帯状況分詞構文」じゃなくて「普通の分詞構文」の挿入です。こんな具合です。
個人や地域社会が世界規模で共有されている知識や文化資産にアクセスできるので、個人や地域社会は国境を越えて取引する経済の実態に影響を受けるのだ。
Because individuals and communities gain access to globally shared knowledge and culture, they are affected by economic realities that come [to] and go over the boundaries of the state.
分詞構文化できるのは、本来は単純なロジックだけです。なぜなら、分詞構文というのは一種の省略技法ですから、譲歩や条件などの複雑なロジックを削ってしまうと、言いたいことが伝わらないからです。譲歩や条件が省略されるのは、慣用的な表現だけです。つまり、いつも使ってるから省略されても分かる場合です。
単純なロジック(論理展開)というのは「時」と「理由」ですから、分詞構文化される前の元文はこの場合「理由」以外考えられません。「世界規模の知識や文化資産にアクセスできるから、個人や社会は実体経済に影響を受ける」のです。「世界規模の知識や文化資産にアクセスできる、個人や社会は実体経済に影響を受ける」んじゃありません。
ということは、asも「理由」、挿入されている分詞構文も「理由」なわけです。すると、この英文を1文で書かずに2文に分けてしまうとこうなります。
個人や地域社会は世界規模で共有されている知識や文化(資産)にアクセスできるので、国境を越えて取引する経済の実態に影響を受ける。だから国家の重要性は減少し始めたのである。
Because individuals and communities gain access to globally shared knowledge and culture, they are affected by economic realities that come and go over the boundaries of the state. So the nation has begun to have a decreasing importance
Z会の訳語を見てみると、分詞構文化する前のロジックが「時」になってます。つまり「Aする際にB」というのは「Aする時にB」と同じです。ですから「世界規模の知識や文化資産にアクセスできる際に、個人や社会は実体経済に影響を受ける」というZ会のこの訳語は間違ってます。それに「Aする際にBするにつれCが始まった」って変な日本語ですよね。次の「鈴村君からの質問」ではZ会の自由英作文の問題集を取り上げますが、最近Z会のレベルが下がってるような気がします。ま、日本全体のレベルが下がってきてるのかも知れませんがね。
一方、河合塾の方は上手に訳語をつけています。ただ、どうしてそんな訳になるのかがよく分かりません。
S, doing~, Vは「Sは~し、Vする」と訳せばよい。
My mother, speaking with the man, remembered that she had met him before.
母は、その男とはなしていて、以前会ったことがあることを思い出した。
これでは単なる個人的な経験則で、文法的な説明にはなっていませんよね。これについては次回考えましょう。
今、村井修の写真集の英訳をやってます。午前中が納期なので、学校からすぐに帰らないといけませんでした。ごめんなさい。鈴村君から依頼のあったスーパー単語プリントは机の上に置いてあります。榊君の添削も隣にありますよ。

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