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野々垣君からの質問(2)

これからしばらくの間、不定期になりますが、慶應義塾大・総合政策の大問Ⅱ、第2段落の赤本の訳語を検証してゆきます。
社会構成主義というのは、現実世界には客観的な真理は存在せず、全ては僕らの主観的な認識の枠組みや知識によってその人なりに形成された意味があるだけだだと考えます。つまり、普遍的真理が僕らの外に存在しているのではなくて、常に変化し続ける日常に僕らが意味づけをするだけだと言うわけです。この現実世界の「無常」性を、社会構成学ではprocesses and transisitonsという言葉で表現します。これを普通は「生成と変容」と日本語にします。赤本が第1段落第3文でやっているように「過程や転換」にすると何言ってるのか分からなくなります。
専門性の高い英文には、その分野の専門家が共通の訳語を振って(ねつ造して?)合い言葉のように使います。「合い言葉」を知らないとよそ者にはその内容がまったく理解できません。この社会構成主義もそのくらい専門性の高い分野です。だから、赤本の「過程や転換」は誤訳ではないのですが、この訳語には何の意味もないわけです。
¶2
(1)In its most radical form, “hard” constructivism takes this symbolic and ideational character of environmental knowledge extremely seriously.
<赤本の訳>
その最も急進的な形である、「極端な」構成主義は、環境の知識の、この象徴的で観念的な特性をきわめて真剣に受け止める
<薮下の訳>
その最も極端なタイプで、「過激な」社会構成主義は、僕らの環境の認識がこのように極めて著しく象徴的で概念的な性質を持ってるという点だけは決して譲らない
<解説>
make A seriouslyには確かに「Aを真剣に受け止める」という意味があります。だけど、「主義が環境の象徴性を真剣に受け止める」って意味不明です。これでは日本語が崩壊してしまっています。ここは「主義がその主張を決して譲らない」くらいに訳出するのが良いでしょう。

2 Comments

  1. 小樽 wrote:

    質問です
    今読んでいる本で
    There are a few, though, who are not at this peak, but who would be very happy there
    という文があり これの訳を調べてみたところ「しかし少数ながら、この頂上に登れば非常に幸せになれる人もいる」らしいのですが どうも全体的にしっくりきません 個々の短語等で分からないとこはないのですが 文として読もうとしたときになぜか詰まってしまいます どうしてか教えてください 分からないところがわかりづらく申し訳ありません

    火曜日, 2月 23, 2016 at 9:24 PM | Permalink
  2. yabu wrote:

    小樽くんからの質問
    小樽くん!返信が遅くなりました。これだけでは想像するしかないのですが、多分at this peakは「高齢であること」、thereは「老人ホーム」かなにかのことを言ってると思われます。ですから、「そんなに歳はとってないのだけれど、そこ(老人ホーム)いて幸せだと感じる人がそこそこいる」くらいの絵が頭に浮かびます。全体の英文を読んでみないと何とも言えませんが、頂上に上るというのは全く意味不明です。

    水曜日, 2月 24, 2016 at 6:47 PM | Permalink

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