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三木翔くんからの質問・その3(第2回・ベネッセ・駿台記述模試、痛恨の誤訳?)

<質問>
これは僕たちが一昨日受験した『2015年度・大学入試模試・第2回ベネッセ・駿台記述模試』の大問3の一節です。
Ramona smiled at herself in the mirror and was pleased.  Two of her most important teeth were only halfway in, which made her look like a Jack-o’-lantern, but she did not mind.  If she had grown-up teeth, the rest of her face would catch up someday.
 「解答・解説」の和訳はこうなってました。
ラモーナは鏡の中の自分にほほ笑みかけ、いい気分になった。一番大切な歯の内の2本はまだ半分しか生えていないので、ハロウィーンの提灯のような顔だったけれど、ラモーナは気にしなかった。大人の歯が生えれば、顔の他の部分もいつか追いつく[大人っぽくなる]だろう。
 ぼくには「顔の他の部分が追いつく」とか「顔の他の部分が大人っぽくなる」という訳が良く分かりません。「他の部分」というのは、何の他の部分なのでしょうか?また、この訳は本当に正しいのでしょうか?薮下先生の考えを聞かせてください。
 <回答>
三木翔くん!模試の英語はできましたか?君の質問の英文は、問題化されてはいない部分ですから、ここが気になっているということは、問題は解けたんじゃないでしょうか。
 さて、ご質問のthe rest of her faceですが、これは三木翔くんの言う通りで、「顔の他の部分」では意味不明です。英語の発想のまま日本語にすると上手く行かないのが restelse です。つまり、「残りの部分」とか「他の部分」と直訳すると意味が通らなくなるわけです。前に授業でやった慶応・経済のカラスの話しを思い出してください。こんな具合でしたね。
Though immediately linked to the three Kumano shrines, it is more broadly related to solar myths found not only elsewhere in East Asia but also as far away as ancient Egypt.
 itはthree-legged crow(3本足のカラス)を指しています。elsewhereは「他のどこか」ですから、そのまま直訳するとこうなります。
 3本足のカラスと言えばすぐに熊野にある3つの神社を思い浮かべるが、東アジアの他のどこかでだけでなく遠くエジプトでも見られる太陽神話ともっと深く結びついている。
 ほらね!これじゃ変な日本語です。英語の発想は、「テーマ+補集合=全体」ですから、Japan+elsewhere=all of East Asiaでいいのですが、そのまま日本語にすると「日本と他のどこか」になってしまいます。日本語はテーマが出しゃばるのを嫌います。テーマは空気のような当たり前の存在じゃないといけません。言い換えると、日本に太陽神話があるのは皆が知ってる当たり前のことなわけです。だから、日本を除外してしまうのです。すると、さっきの等式は「その他のどこか=東アジア全体」になるでしょ!つまり「elsewhere=all of East Asia」になるわけです。だからelsewhereは「東アジア全体」と日本語にすると上手く行くのです。こんな具合です。
 3本足のカラスと言えばすぐに熊野にある3つの神社を思い浮かべるが、東アジア全域だけでなく、遠くエジプトでも見られる太陽神話ともっと深く結びついている。
 これと全く同じ理屈で、「歯+歯以外の残りの部分=彼女の顔全体」、つまり「teeth+the rest of her face=her whole face」と発想するのが英語です。でも、大人の歯が生えてくれば、その歯が大人っぽいのは当然のこと。だから、歯を等式から除外して「the rest of her face=her whole face」と考えて、the rest of her faceは「彼女の顔全体」と訳すと日本語らしくなるわけです。
 ラモーナは鏡の中の自分にほほ笑みかけ、いい気分になった。一番大切な歯の内の2本はまだ半分しか生えていないので、ハロウィーンの提灯のような顔だったけれど、ラモーナは気にしなかった。大人の歯が生えれば、顔全体が大人っぽくなるからね。
 ほらね!ちゃんとした日本語になりました。だからベネッセ・駿台が決して「誤訳」してるわけではありません。でも、「変な日本語が正解」なんて、日本の英語教育(受験英語)って一体何なのでしょうかね?こんなことをやっていて、なにか意味があるのでしょうか?
 さて、実は『2015年度・大学入試模試・第2回ベネッセ・駿台記述模試』の「解答・解説」には、1箇所「誤訳」があります。それは次回のお楽しみです。

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