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乾君の挑戦・その3

平成32年にオリンピックがやってくるので、日本に対する諸外国の興味、感心も高まってきて、外国人観光客が増えるんじゃないかと皆が期待しています。そこで、京都市やその周辺では、インバウンド対策として、パンフレットの刷新が現在進行中です。あ、このinboundという形容詞は、「入ってくる」という意味で、travelers inbound to Japanで「日本へ入国する旅行者」、travelers outbound from Japanで「日本から出国する旅行者」のように使います。日本ではinboundを「外国人観光客」の意味の名詞で使ってますが、こればただの和製英語で、間違った使い方です。
そんな中、今までに日本庭園や唐紙に関する書籍を翻訳していたこともあって、京都にある龍安寺のパンフレットの翻訳を依頼されました。授業でそう言ったところ、「英作文の勉強になるから僕らもやってみたい!」という子が何人もいました。そこで、パンフレットの日本語をいくつかここで取り上げて英作してもらい、薮下が添削をすることにします。あ、ここでの「正解」が、いずれは龍安寺の英語のパンフレットになります。ちょっと面白いでしょ!最初の挑戦者は、いつも鋭い質問をしてくる今井君です。
<問題>
1147年、藤原実能(ふじわらのさねよし)、円融寺(えんゆうじ)跡を領有、ここに山荘を営み徳大寺を建立。後の家名となり、徳大寺家が山荘を世襲。
<答案>
In 1147, Fujiwara no Saneyoshi owned the ruins of En’yu-ji Temple, and ran a mountain villa and built Tokudai-ji Temple here. It had become their family name, and they owned the villa by succession.
<読者への挑戦>
赤い部分の英語が間違っています。さて、どうしてそれが間違っているのか、またどうすれば正しい表現になるのかを考えてみてください。
<添削>
大学入試の英作文なら、これで合格点がもらえます。でも、翻訳となるとそうは行きません。ポイントは3つで、「円融寺はownできない!」、「山荘を営むことは経営することじゃない」、そして「完了形にすると1147年には既に家名になっていないといけない」です。
1.1147年に円融寺は既に廃墟だった!
翻訳は、ただ日本語を英語にすれば良いわけではありません。今回の翻訳のテーマは「龍安寺」ですから、翻訳に取りかかる前に数日間は「龍安寺」について先ず下調べをします。今はネットワーク上に色んな情報が散在してますから、書籍よりもネット検索が中心になります。
すると、「円融寺」はすでに991年には「一条天皇崩御後、衰微した」とあり、問題文にも「円融寺」とあるので、「区画がはっきりしている物件の所有権を法的に手に入れる」の意味のownは使えません。「法的な所有権の有無に関係なく手に入れる」意味のpossessionを使います。ね!翻訳って結構面倒でしょ!
1147年、藤原実能、円融寺跡を領有する。
In 1147, Fujiwara no Saneyoshi took possession of the ruins of En’yu-ji Temple.
続きは次回にします。

2 Comments

  1. 諸戸 wrote:

    先生、少し前に首を痛めたと読みましたが、大事ないでしょうか?どうぞご自愛ください。
    といいつつ、表題に関係ありませんが質問させてください。
    西きょうじ先生『ポレポレ英文読解プロセス50』p.37 例題14より
    I feel that the teacher’s role is more fundamental than critic’s. It comes down ultimately,I think, to the fact that his first obligation is to the truth of the subject he is teaching,and that for the reading of literature ever to become a habit and a pleasure, it must first be a discipline.
    という文についてです。
    質問の内容というのは、2文目の文頭にあるit(It comes down toのit)が何を指しているのかです。
    著者の西きょうじ先生は、これをthe teacher’s roleとしているのですが、私は1文目のthat節であると考えております。根拠は以下の通りです。
    1)文の論理展開として、1文目は抽象文でtopic sentenceにあたり、2文目のsupporting sentenceでは、it comes down toとあるように、1文目の根拠を示す文と考えます。(come down to≓be because of)
      また、1文目ではI feelとし、2文目ではI thinkと挿入していることから、1文目のfeelの目的節の信憑性への付け足し(根拠の添加)と考えます。よって、2文目の主題(主語)たるべきはthat以下である。
    2)Longman Dictionary of Comtemporary English (5th Edition)によると、
    come down to ・・・ if a complicated situation or problem comes down to something, that is the single most important thing
      とあることから、主語に置くべきは”a complicated situation or problem”であるのが望ましいと考えます。その上で単一の抽象名詞であるthe teacher’s roleが主語となるのは不適と捉えます。
    以上2点から、itの内容は1文目のthat節だと考えております。
    また、1文目のthat節で考えた際には、2文目the fact that his first obligation is・・・のhisの引用元が教師と批評家の二通り考えられるのではないかという指摘も考えられますが、
    1文目that内では比較級が使われており、focusは教師にかかっているので、指示語の引用はこちらが優先され、曖昧性は生まれないと考えております。
    どちらも意味的な解釈の面では大きな違いは生まれないのですが、上級大学を目指す学生が論文を始め難解・複雑な文を読む際にはこういった細部の追求が、読解力向上の手順として重要なのではないかと考えてご質問に至った次第です。
    大変お忙しいところと存じ上げますが、お手のあいた時にお答えいただければと思っております。
    よろしくお願いします。
    諸戸

    木曜日, 7月 2, 2015 at 11:10 PM | Permalink
  2. yabu wrote:

    諸戸先輩!ソファで変な姿勢で寝ていたら、寝違えてしまいました。そこでちゃんと手当をしていたら良かったのですが、筋トレやらストレッチングをやっていたら、椎間板が飛び出してきました。結局、中度のヘルニアで、右腕がしびれています。痛み止めを飲んでいるので、痛いというよりも重たい感じがします。でも、その副作用で猛烈に眠たい!最近では、黒板に字を書きながら眠ってます。
    さて、ご質問のitの内容ですが、これはただの形式主語です。It comes down to the fact that文は、ほとんどIt is a fact that文と同じ意味で、「[文]というのは事実である」の意味です。こんな具合です。
    ⊿映画を効果的に見せる工夫はいくらでもできるけど、映画は結局はストーリーだよね。
    You can dress it up, but it comes down to the fact that a movie is only as good as its script.
    =You can dress it up, but it is a fact that a movie is only as good as its script.
    =You can dress it up, but a movie is only as good as its script.
    これは映画監督のCurtis Hanson の言葉ですが、3つとも同じ意味で使われます。そして、it comes down to the fact thatを消しても、意味が全く変わらないことが分かります。だから、「映画はストーリで決まるのは事実だ」=「映画はストーリで決まる」なわけです。
    諸戸先輩の推論はとっても面白いですね。確かに、英文は「抽象→具体」の流れですから、左の内容が右で具体化されます。でも、全ての英文がそういう明快な論理展開で書かれているとは限りませんし、特に入試英文は(アホな)作問委員が字数合わせの目的で乱暴に削ってしまうので、なかなかそうは行きません。
    そして、諸戸先輩がご指摘の通りで、itはthe teacher’s roleであるはずがありません。西きょうじにしろドラゴンイングリッシュにしろ、彼らは頭は良いのですが、英語は分かってませんね。歩レポレは読んだことがないのですが、このぶんだとたくさん間違いがありそうです。

    土曜日, 7月 4, 2015 at 8:30 AM | Permalink

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