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車戸君からの質問(13)

<質問>
次の英文は京都大学2002年度の下線部訳の問題です。
Until recently, studying music in school was regarded as a luxury.   A child’s math and language skills or scientific problem solving were considered to deserve the major portion of the curriculum, while music, art, and other related subjects received only passing attention at most.  Music teachers faced competing demands from extra lessons, sports practice, and play rehearsals.  But with the help of science, this erosion of time devoted to music looks like being halted and even reversed.
赤本の正解はこうなってます。
最近まで、学校で音楽を勉強するのは贅沢なことだと見なされていた。子供が数学や会話の技術や、あるいは科学的な問題解決の方法を身につけることは、カリキュラムの大部分を割り当てられるに値すると考えられていたが、一方で音楽や美術やその他の関連科目はせいぜいごくわずかな注意が払われるに過ぎなかった。音楽の教師たちは、補習授業やスポーツの練習、また芝居の稽古と、授業時間を取り合うといった状況に直面していた。しかし、科学のおかげで、音楽の授業にあてられる時間が減少されることはなくなり、むしろ逆に増加しているようにさえ見える。
僕にはfrom extra lessons~が「補習授業」になるのがどうにも納得できません。薮下先生の考えを聞かせてください。
<回答>
車戸君!薮下はちょっと体調を崩してしまい、しばらく学校に行けませんでした。ごめんなさい。実は子供の時に罹ってなかった水疱瘡になってしまったのです。あ、大人の場合は帯状疱疹というそうですね。大人になって罹るとこれがすごく大変なのですよ!頭に5寸釘を打ち込まれるような痛みが数分おきにずっと続くのです!!車戸君は水疱瘡に罹りましたか?罹ってなかったら早めにやってしまった方が身のためです。
さて、ご質問のfrom extra lessonsが「補習授業」になっている理由は簡単で、赤本の著者がcompeting demandsを「みんなで授業時間を取り合うこと」と誤訳してしまったからです。「取り合う」というのはお互いに授業時間を奪い合うわけですから、音楽の教師もその競争に加わってないといけません。だから、赤本の訳語が「音楽の教師達補習授業(の担当教師)授業時間を取り合う」になっているわけです。
赤本の著者はcompetingを勘違いして、音楽の教師や補習授業の担当教師、スポーツクラブや演劇部の顧問教師たち全員が授業時間を「取り合う」と訳出しています。でも、これは車戸君の言うとおりで、fromは「demands from extra lessons~」ですから「補習授業(の担当教師)からの要求」です。つまり、音楽の教師は授業時間の取り合いには参加してはいません。competingしているのは補習授業の担当教師、スポーツクラブや演劇部の顧問教師たちだけで、音楽の教師は一方的に授業時間をよこせと要求されているわけです。
この英文には省略があって、完全な英語にするとこうなります。
Music teachers faced competing demands [on their time] from extra lessons, sports practice, and play rehearsals.
そのまま和訳すると、こうなります。
「音楽の先生は、授業時間に関して、補習授業やスポーツの練習、芝居の稽古(を担当する教師)からの競争的な[授業時間の]要求に直面した」
車戸君!なかなか冴えてますね!あ、補習授業に加えて、多量の翻訳の仕事が入ってきました。「やり文」はちょっとお休みします。

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