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車戸君からの質問(12)

<質問>
次の英文は京都大学2001年度の[2]の下線部訳です。
(1)Forced with a flood of disconnected, random inputs generated by more primitive areas of the brain during sleep, the higher mental centers attempt to impose order on the incoming signals, creating whatever narrative structure dreams have.
赤本の正解はこうなってます。
睡眠中に脳のより原始的な部分が生み出す支離滅裂ででたらめな情報の洪水に直面すると、脳のより高度な中枢部は、入ってくる信号に秩序を与えようとして、どんなものであれ、夢のもつ物語的な構造を作り上げるのである。
僕は次の様に訳しました。
寝ている間に、脳のあまり進化していない場所で作り出された、まとまりがなくデタラメな情報の洪水に直面すると、はるかに進化している脳の中枢は、その入力信号に秩序を与え、夢に出てくるあらゆる話の構造に仕立てようとする
赤本の訳では、attempt toがimposeにしか掛かってないのですが、僕はその後ろの付帯状況分詞構文のcreatingにも掛かっていると思います。薮下先生の考えを聞かせてください。
<回答>
車戸君! 君の質問は、付帯状況分詞構文の特質に関わっていてる、とても高度で面白い質問です。結論から言ってしまうと、attempt toはimposeにしか掛かっていません。つまり、赤本の訳語が正しいわけです。あ、とっても残念そうですね!今までは車戸君の連戦連勝でしたから、ガッカリするのも分かります。
「付帯状況」というのは、言いたいこと(主節)と「同時」に起こっている状況や、それと「連続」して起こる出来事を後ろから付加的に説明するテクニックです。ということは、付帯状況は「言いたいこと」とは完全に切り離されてるってことです。コンマ(,)が持っている、文を断ち切る力はそれくらい強力であるとも言えます。だから、attempt to impose order on the incoming signalscreate whatever narrative structure とは全く別の出来事だと考えなくちゃなりません。そして、ここは「連続」して起こる出来事を言ってますから、ちゃんと「Aして、そして(その結果)B」と訳出してやらないといけないわけです。
薮下はそれよりも第2段落の次の英文の訳語が気になります。
The fact that most dreams have a surrealistic quality―a quality that causes them to be highly resistant to interpretation―has influenced many people to dismiss dreams as altogether meaningless.
たいていの夢が超現実的な性質―夢が解釈を強く拒む原因となっている性質―をもっているために多くの人は夢を全く無意味な物として片付けてきた。
この「夢が解釈を強く拒む原因となっている性質」ってのが良くありません。夢は僕らの解釈を決して拒みませんからね。resistant to Aは「Aに耐性がある」ですが、ここでは、例えばbe resistant to corrosionが「腐食に耐性がある」でも「腐食しにくい」でも良いように、「非常に解釈しにくい」とやってやれば良いわけです。だからここは「夢を非常に解釈しにくくさせる性質」とか「僕らが夢を解釈するのをとても難しくさせる性質」と訳出します。
車戸君は赤本の解説を、大学院生のアルバイトだとバカにしていますが、確かに「よく(frequently)」間違ってはいますが、「いつも(always)」間違っているわけではありません!

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