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車戸くんからの質問(4)

<質問>
あともう1つ僕の和訳を添削してくださいませんでしょいうか?
There are works of art that appear to be universal, in the sense that they are still loved and enjoyed centuries after their production.  They awake instant recognition in millions throughout the world.  They speak not only to their own time―the relatively small audience for whom they were originally produced―but to worlds beyond, to future generations, to a mass society connected by international communication that their creators could not suspect would ever come into being.(東大)
作り上げた人がまさか存在していただろうと予想することも出来なかった国際的なコミュニケーションによってつながれた広い社会
<回答>
車戸くん!この東大の下線部訳はとっても面白いですね!これは関係代名詞の定番の問題の1つです。
警察が指名手配中だということを彼女が知ってる男が突然裏口に現れた。
Suddenly the man who she knew was wanted by the police appeared at the back door.
この問題のパターンの特徴は、関係代名詞が導く飾りの中にV+Vが出てくることです。英語の先生はこれを良くshe knewの挿入だと説明しますが、全然違います。なぜなら、飾りの部分を復元するとこうなるからです。
彼女は彼が警察によって指名手配されていることを知っていた。
She knew [that he was wanted by the police].
この英文の he が関係代名詞whoに変わって文頭に出ます。従属接続詞の that は省略されますからknew wasのV+Vが現れます。それにしても、いったいこれのどこが挿入なのでしょうかね?薮下には良く分かりません。これはロシア人形のマトリョーシカのように、文の中に[文]が入り込んでいるだけで、決して挿入なんかではありません。ま、確かにshe knewを消しても英文が成り立つことには違いありませんがね。
河合塾の解説者が指摘している通り、東大の英語にもV+Vが現れています。赤い部分がそれに当たります。だから、この英文もマトリョーシカのタイプだと分かります。例文でやったように、飾りの英文を完全文にするとこうなります。
芸術作品の制作者は、国際的な通信網でつながれた大衆社会が本当に出現するとは思わなかった。
Their creators could not suspect [that a mass society connected by international communications would ever come into being ].
問題にケチをつけるつもりはありませんが、ここはsuspectよりもimagineの方がきれいです。もしかすると東大の先生が動詞を差し替えたのかもしれません。さて、河合塾の解説者は続けてこう言います。
ここではtheir creator could not suspectを一種の挿入と見なして、いったんtheir creators could not suspectをは外してみると、international communications that would even come into beingという構造が見えてくる。つまり、thatは主格の関係代名詞で、先行詞はinternational communicationsということが分かる。
えっ?ちょっと待ってくださいよ!their creator could not suspectを挿入と見ようが見まいが、大した違いはありませんが、thatの先行詞がinternational communicationsだというのは大ウソです! なぜなら、connected by international communicationはmass societyを後ろから飾っている形容詞句だからです。この東大の下線部が面白いのはここです。つまり、先行詞と関係代名詞の間に「過去分詞から始まる形容詞」が挟まって、2つが離ればなれになっているのがミソなのです。あ、「過去分詞から始まる形容詞」はルール16でやったやつですよ。こんな具合です。
英語で書かれた本
a book written in English
国際通信網でつながれた大衆社会
a mass society connected by international communication
この「過去分詞から始まる形容詞句」を外すと英文の構造がハッキリ見えてきます。下に書いた通り、ことシリーズのthat(従属接続詞のthat)は省略されています。a mass societyは関係代名詞thatになって前に出て行きますから消えてしまうので×がついてます。そういうわけで、どう見ても関係代名詞 thatの先行詞は mass societyじゃなくちゃいけない。
芸術作品の制作者が本当に出現するとは思いもしなかった大衆社会
a mass society that their creators could not suspect [that] × would ever come into being
「大衆社会」が先行詞となって残りが全部飾りになるのだから「作成者が本当に出現するとは思わなかった大衆社会」となるわけです。そして、さっき外した「国際通信網でつながれた」を戻してやると正解にたどり着けます。さらに解説者はこう言います。
よってtheir creators could not suspectを「その作品の制作者は・・・と疑うことができなかった」と訳したら文意が全く逆になってしまう。their creators could not suspectを外した訳は「実現するであろう国際的通信網」となり、外したtheir creators could not suspectを再び代入すると「実現するであろう[と考えることができなかった]国際的通信網」となる。
いえいえ!「実現するであろう通信網」じゃなくて「制作者は大衆社会が本当に出現するとは思わなかった」と書いてあるのです。つまり、「その制作者は大衆社会が出現するのを疑うことができなかった」と言ってるわけです。あ、この日本語がおかしいのは解説者がsuspectを「疑う」と訳しているからです。suspectやdoubtを「疑う」と訳すと区別がつきません。suspect A is Bは「AはBだと思う」、doubt A is Bは「AはBじゃないと思う」と覚えておいた方が良いでしょう。だから「実現するのを疑うことができなかった」じゃなくて「出現するなんて思わなかった」となるのです。この解説者は自分が上手く和訳できないのを根拠に、「文意が全く逆になる」と言ってるわけです。この解説者は英語が分かってないですね!今の河合塾の講師レベルはこんなものなのでしょうか?!
不思議なのは、この前のページにある構造図は正確に書かれていることです。なぜ構造図の方は正しいのに、解説が間違っているのでしょうかね?
さて、車戸君の答案ですが、英文の構造はちゃんと理解できています。ただ、日本語は時制にいい加減なので「存在していただろうと」を「存在するだろうと」にすると良いでしょう。これは次の例を見れば分かります。
こんなところで再会したとは予想もしていなかった。(×)
こんなところで再会するなんて予想もしていなかった。(○)
We didn’t imagine that we would meet here.
ま、come into being は本当は「生じる」とか「出現する」の方が良かったね。そして、a mass societyは「大衆社会」です。massには「大量」と「大衆」の訳語を当てはめてみると良いでしょう。
大衆娯楽、大衆芸能
mass entertainment
大量生産
mass production

8 Comments

  1. taro wrote:

    英文和訳道場31回の質問です。
    There is much more that you do know about your language which cannot so conveniently be looked up, and you were never explicitly taught.
    “which cannot…”と”which you were…”はyour languageにかかっていると考えて、「そういう言葉についてあなたが知っていることがたくさんある。」だと思ったのですが、先生の訳では”that you do know about your language”を「君たちの使っている言葉に関して、確かに君たちは知っているのだが、」と逆説ような訳になっており、それがなぜだかわかりません。
    できれば教えてください。

    日曜日, 12月 1, 2013 at 12:15 PM | Permalink
  2. yabu wrote:

    車戸くん!あれっ?君の名前ってタロウでしたっけ?確か君には和訳道場の第10回目までしか手渡していなかったように記憶しているのですが、もう31回までやっちゃったのですか?すごいですね!
    さて、ご質問のwhich cannot~とwhich you were~ですが、先行詞はmuch moreです。決してyour languageではありません。だって、whichのところにyour languageを入れてみれば簡単に分かります。
    ⊿君たちの母国語はそんなに簡単に調べることができない?
    Your language cannot so conveniently be looked up.
    ⊿君たちは自分たちの母国語をちゃんと教わったわけではない?
    You were never explicitly taught your language.
    「言語(language)が調べられない」とか、「言語をちゃんと教わったわけではない」となると、文盲の僻地に関する記述ならともかく、全く意味不明です。ですから、このwhichの先行詞はmuch more以外にありません。ま、この英語は悪文で、君が読み切れなかったのも無理のないことです。これをもっと分かり易く書き換えるとこうなります。
    ⊿君たちは自分の母国語について、そんなに簡単には(辞書では)調べることができず、人からちゃんと教わったわけではないのに、(それにもかかわらず)君たちが確かに知っていることが(辞書で調べるよりも、人に教わるよりも)はるかにたくさんある。
    You know much more about your language that cannot be conveniently looked up and that you were never explicitly taught
    先ず、関係代名詞のthatとwhichですが、シカゴ・マニュアルによると、thatで飾るときには強い主張が、whichで飾るときにはオマケの説明が来るとあります。ですから、この英文はwhichじゃなくてthatを本当は使わないといけない。でも、There is much more that~とやってしまったので、thatを3回使うのを憚ったのでしょうかね?もしかするとまた大学の先生が手を加えて変な英語にしてしまったのかも知れません。ま、それは置いておいて、訳語を見てもらったら分かるように、これは紛れもない逆接なのですよ!あ、シカゴ・マニュアルについては自分で調べておいてくださいね。
    車戸くんは、今まで英文の構造を読み間違えたことはなかったのに、この簡単な英語でミスるとは思いませんでしたよ!まだ修行が足りませんね!ま、まだ高2ですからたくさん時間があります。気長にやりましょう。

    日曜日, 12月 1, 2013 at 4:47 PM | Permalink
  3. doublespeak wrote:

    英文解釈の勉強をしたいのですが。何から手をつけたらいいかわかりません。
    相談しに行ってもいいですか?

    火曜日, 10月 31, 2017 at 5:16 PM | Permalink
  4. yabu wrote:

    いいですよ。でも、来週でいいですか?今週は予定が入っています。

    木曜日, 11月 2, 2017 at 2:30 PM | Permalink
  5. doublespeak wrote:

    ならば今週の火曜でも宜しいですか?

    日曜日, 11月 5, 2017 at 6:50 PM | Permalink
  6. yabu wrote:

    添削はできてます。次の回のプリントと一緒に返してあげます。時間のあるときに来てください。

    金曜日, 11月 10, 2017 at 10:08 AM | Permalink
  7. バイトで忙しい wrote:

    以前先生はもう赤本解けみたいな事を仰っていましたがあれってホントですか?
    話は変わって、センター試験の同日開催のを受けることにしたので2年分くらい解いてみようと思うのですが、僕の家にコピー機がないので宜しければ用意して頂けませんか?
    昨年度のは授業で扱かったと思うのでその前からお願いしたいです。
    それとテスト週間で他教科やらないといけないので暫く英文和訳道場ができないのですみません。

    日曜日, 11月 26, 2017 at 6:47 PM | Permalink
  8. yabu wrote:

    そんな暇は今の薮下にはありません。残念ですがコピーは自分でなんとかしてください。

    日曜日, 11月 26, 2017 at 9:03 PM | Permalink

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