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技術があれば何でも解決できるわけじゃない!

「ヤバイ英単語」の連載が終わったので、やっと「エッセイ」に時間が使えます。特に9月からやっている『本田宗一郎・夢を力に』の翻訳作業にまつわるこぼれ話を中心に、思いつくままに書いてみようと思っています。薮下がやった英訳も一緒に付けておきますから、日本語と対比して勉強してくださいね。
本田宗一郎氏がその著書の中の「専門家の任務」ということで面白いことを書いています。ちょっと長いけどここに引用します。
「最近、一流の経済雑誌なんかが、どのくらいの値段でどういうタイプの製品を作ったらいいかアンケートをとったらいいじゃないか、と麗々しく書いている。  僕はこれを見てガッカリした。大衆にアンケートをとって聞くことは参考にはなる。たとえば、自分のまいた種がどの程度大衆に受け入れられているか、また不満があるかといったものなら賛成だ。
しかし、本来のもの(何を作ったら売れるか)について、何だかんだとアンケートをとるのはおかしい。  なぜなら、ものを作ることの専門家が、なぜシロウトの大衆に聞かなければならないのだろうか。それでは専門家とは言えない。どんなのがいいかを大衆に聞けば、これは古いことになってしまう。シロウトが知っていることなんだから、ニューデザインではなくなる。
大衆の意表にでる(意表を突く)ことが、発明、創意、つまりニューデザインだ。それを間違えて新しいモノを作るときにアンケートをとるから、たいてい総花式なものになる。他のメーカーの後ばかり追うことになる。つまり、職人になっちゃう。」
(『本田宗一郎 夢を力に』第3部・「ざっくばらん人生」)
Lately, major economic magazines have been ostentatiously suggesting that companies conduct surveys on the types of products and prices consumers want. I was disappointed to read this. Surveys of public opinion are useful as a reference. For example, I’m entirely in favor of conducting surveys of the extent to which products are received by the public and what consumers are dissatisfied with in regard to products.
But I think it’s strange to survey the public on their opinions as to what products to make. Why do the experts who create the products have to ask the non-expert public about what to make? If they do, then they aren’t experts. Asking the public what products they want is tantamount to asking about the past. It’s what they know about, so their suggestions aren’t going to lead to novel designs.
What takes the public by surprise are inventions and innovations-in other words, brand new designs. But companies get this wrong, so they survey consumers when they decide to develop a new product. Products based on such surveys are usually nondescript. Companies end up copying what other manufacturers have already produced. In a word, they become craftsmen instead of creators.
これを読めば、日の丸家電メーカーの失敗を宗一郎氏は50年以上前に予告しているのが分かります。最後のところで、職人じゃダメ!ってハッキリと言ってますよね。つまり、何を作ったらよいのかは、その専門家に任せなさい!というわけです。その前のところで言うには「我々が行動(=もの作りを)する場合には、(何を作ったら売れるのかに)気づくことが先決条件である」、「技術があれば何でも解決できるわけではない。日本には技術屋はいるが、(何を作ったらよいのかと言う問題を)なかなか解決できない」わけです。
日本の家電メーカーは昔から技術ばかりが先行してしまって、何を作ったら良いのか分からない。その結果、ソニーのβ方式のビデオデッキは高性能だったのだけど普及せず、携帯電話はガラパゴス化し、3Dテレビはゴミになってしまいました。3D画像なんて、映画館の大画面で見るからビックリするんです。家にある小さなテレビで見たって、チョコレートのオマケに付いていた「絵が動くバッジ」みたいなもので見づらいだけです。あんなものが売れると思ってたなんて信じられないですよね。
これだけ失敗しているのに、まだ4Kテレビだ何だと言ってます。今でも相変わらず「もの作り」の技術ばかりが強調されて、良いものを作れば売れると思っているということです。どうせまたすごい機能があれこれ盛り込まれた「総花式なもの」が出来上がって1インチ1万円とか2万円で売るのでしょうが、僕らはそれを「キレイだなあ」とは思っても、プラズマや液晶との違いなんて分からないので「大衆の意表にでる」ことはなく、早晩その技術がまた韓国家電メーカに漏れて陳腐化し、最後には価格競争で大負けするに決まってます。宗一郎氏が生きていたら、ひどく怒られることでしょうね。

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