【講義ノート80】「have+O+分詞」はないでしょ!
■そのコメディアンは人々を笑わせた。(「笑わせていた」の日本語は変です!)
The comedian had the people laughing.
これについては、ひとこと言わせてもらいます!「have+O+分詞」と括(くく)るのは、ナシでしょ!
▼僕は彼にタバコをやめさせた。
I had him [to] give up smoking.
▼僕は自分の息子が髪を長く伸ばすのを容認するわけにはいかない。
I won’t have my son wearing long hair.
▼僕は名古屋に新しい家を建ててもらった。 I had a new house built in Nagoya.
これが受験に良く出題されるhaveの特別な用法です。この3つを学校英文法では何て呼んでいるのかというと、上から「使役動詞have+人+原形不定詞」、「won’tを伴った許可・容認のhave+人+現在分詞」、「使役動詞have+モノ+過去分詞で恩恵の受け身・被害の受け身」です。よくもまあ色んな名前を付けてくれたものです。確かに、「分ける」ことは「分かる」ことにつながりますが、分類しすぎると逆に分かりにくくなります。have本来の意味は、あくまでもモノや人や状況を「持つ」です。それを頭に置いて次の英文を見てください。全部SVOの第3文型です。青色の部分は2語以上の形容詞ですから名詞の後ろにひっついて名詞を飾って(ETして)います。ETの法則を忘れた子はここを参照してください。
▼僕はタバコを止める彼を持った。
I had him ← to give up smoking
▼僕は髪の毛を長く伸ばしている息子を持ちたくない。
I won’t have my son ← wearing long hair
▼僕は名古屋に建てられた新しい家を持った。
I had a new house ← built in Nagoya
ほらね!「使役動詞のhave」も「容認のhave」も「恩恵の受け身のhave」も全部「持つ」でしょ!ここまで分かったら、後は簡単です。例文のhaveも全く同じであることが分かるでしょう。
▼そのコメディアンは笑っている人々を持った。
The comedian had the people ← laughing
さて『総合英語Forest』の説明を見てみると、「have / get+O+現在分詞」で「Oを~している状態にする」の意味を表すとあります。Oの所には人でもモノでもくることになってます。薮下が気に入らないのは、この「~する・させる」というのは使役動詞の訳語でしょ!だから生徒たちは「笑っている状態にする」と「笑う状態にする(笑わせる)」の区別がつかなくなるんですよ!結局「have+人+原形不定詞」も「have+人+現在分詞」もどっちも、いつでも使える使役の表現だと思い込んでしまいます。つまり、こういう事になるのです。
▼そのコメディアンはギャグで人々を笑わせた。
The comedian had the people laughing at his joke.
=The comedian had the people laugh at his joke.
申しわけ程度の<参考>が下の方にチョコッとついていて、「have+O+動詞の原形」は「Oに~させる/してもらう」と言う意味で、完結した動作を表すときに使う、と書いてあります。たぶん「laughingの現在分詞は「現在進行中の状態」であるのに対して、laughの原形は「完結した動作」だと言いたいのでしょう。でも、これは真っ赤なウソです!
だって、原形というのは「原形不定詞」のことだから、不定詞や分詞は形容詞ですよね。ETの法則を説明するときに使った例文を思い出してください。
▼今日読む本
a book to read today
▼日本を扱っている本
a book dealing with Japan
▼英語で書かれた本
a book written in English
不定詞は本来、「まだやってないこと」を表現します。だから、「今日読む本」はまだ読んでない本です。大切な本なら「今日読むべき本」の訳語もつきます。決して「完結した動作」を不定詞は表しません!使役動詞haveが原形不定詞を取るのは、「まだやっていないこと」を人にさせるからです。「もうすでにやってしまったこと」をさせるなんて意味がありません。
▼僕は彼にタバコを止めさせた。
I had him to give up smoking.
これを見ると、タバコを止めさせたのだから「タバコを止める」という動作は完結している様に思えます。でも次のはどうですか?
▼僕は彼にタバコを止めさせるつもりだ。
I will have him to give up smoking.
ほらね!彼の「タバコを止める」という動作は完結していないでしょ!だから、動詞の原形に完結した動作を表すことなんてできないのですよ!
じゃあ、どう落とし前をつければ良いのかというと、「have / get+O+現在分詞」なんて今まで大学入試に出題されたことなんかないのだから、高校生に覚えさせなきゃ良いんですよ!この『総合英語Forest』は「あれもこれも」(味噌もクソも)何でも高校生に詰め込もうとする嫌いがあります。キルケゴールじゃないですが、やっぱり「あれかこれか」をちゃんと厳選して口に含ませてやらないといけないんじゃないの?!
あ、もう1つついでに言わせてもらうと、2つ目の例文の訳語はこうじゃないといけませんよ。
■彼はその機械を修理して動くようにした。
He got the machine working.
<参考>のところに、haveはある状態を継続させることを表すときに、getはある状態へ変化させることを表すときに使う、とせっかく良いことが書いてあるのに!だったら、「彼は今まで動かなかった機械を動くように変化させた」という意味なのだから、「彼はその機械を動かした」だけでは、機械がもともと正常だったのか故障していたのかが分からないでしょ!あ、haveが「ある状態を継続させる」のではなく、「持つ」こと自体が状態動詞なのだから、それが継続するのは当たり前なのです。使役動詞の意味を無理矢理持たせようとして、have本来の意味をねじ曲げてますよ!
薮下は『総合英語Forest』を結構気に入っていました。どうしてかというと、総論と各論を分けて学校英文法を解説した、日本で最初の参考書だからです。Part1の「これが基本」で漠然としたイメージを見せておいて、Part2の「理解する」で取り扱うテーマ全体を総括します。最後のPart3で細かい点を各論として補足していますね。この書き方はブリブリ面白いです!とっても頭の良い人が書いた参考書であることが分かります。でも「have / get+O+現在分詞」なんて言ってたんじゃダメですよ!この分類法では、生徒たちだけじゃなく教師さえも混乱させます。ちょっとガッカリですね。次回の参考書の採用検討会では『総合英語Forest』以外のものを推すしかなさそうですね。あ~!また喋りすぎてしまいました。本当にごめんなさい!
【第19章 分詞(1)】例文161
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This was written by
yabu. Posted on
金曜日, 12月 30, 2011, at 10:14 AM. Filed under
「ヤバイ英文法」. Bookmark the
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