Skip to content

悪魔の語法(動詞編36)4型クズレ【to誰に+ 何を】また番外編

台風15号のせいで学校が休校になったので、もう一回番外編をやろうと思います。ここも気楽に読み流してくださいね。さて、僕らの学校はミッション・スクール(mission school)なので、毎週チャペル礼拝があります。その際に必ず「主の祈り」を唱えますね。「天にまします我らの父よ。願わくは・・・」というやつです。その一節にこういうのがありました。
■我らの日用の糧を今日も与えたまえ。
Give us this day our daily bread.(現代英語)
Giue us this day our daily bread. (近代英語)
yeue to us today oure eche dayes bred. (中英語)
urne gedćghwamlican hlaf syle us to dćg (古英語)
古英語は何を言っているのだかさっぱり分かりませんが、「~は(主格)」「~を(目的格)」「~に(与格)」「~の(所有格)」の意味を全部格変化で表現していたようです。例えばこの格変化を word を使って説明すると、「言葉は」とか「言葉を」なら word のままで、「言葉の~」なら wordes ~、「言葉に」なら worde と語尾が変化します。名詞の語尾が変化するなんて、ブリブリ面倒くさいよね!この格変化はとても煩雑だから、歴史の流れと共に段々なくなってゆくわけです。ちなみに urne は our、gedćghwamlican hlaf  は daily loaf に当たります。loaf は bread の意味です。give に当たるのが syle で、これは sell の語源なのですが、この時代は「売る」ではなく「与える」だったのが面白いですね。us to dćg は us todayでしょうね。
これが中英語になると、なんと「to誰に+何を」の「4型クズレ」が登場します!yeue は give に当たり、to us が「to 誰に」、today oure eche days bred は「今日一日のパン」で「何を」なわけです。ということは、この「4型クズレ」は中英語期(11世紀から15世紀頃)に流行ったとても古い語順であることが分かります。この古い語順が今でも残っているわけですね。
近代英語になると、今度は前置詞が脱落して、第4文型 「誰に+何を」 の語順が現れます。もうこれは現代英語とほとんど同じですね。
さて、ここから分かるのは、give が導く文型は「格変化」→「to誰に+何を」→「誰に+何を」の順に角が取れて丸くなっていったと言うことです。言い換えると、「格変化」→「4型クズレ」→「第4文型」の順に単純化して行ったわけですね。薮下は前のブログで『あと50年も経つと「to誰に+何を」はきっと、時の流れと共に角が取れて「誰に+何を」になってしまうはずです。見ててごらん!』と書きましたが、単なる妄想でないことが分かりましたか?
実は、この「4型クズレ」には他にも「誰に+with何を」、「誰に+of何を」、「誰から+of何を」の3つがあるのですが、やっぱりこれも「第4文型」よりも古い語順で、いずれは全部「第4文型」を使って表現されるようになるはずです。じゃあこの4つの「4型クズレ」の違いは何なのかというと、薮下はこう考えます。
・「言う系」=「格変化」→「to 誰に+何を」→「誰に+何を」
・「伝える系」=「格変化」→「誰に+of 何を」→「誰に+何を」
・「与える系」=「格変化」→「誰に+with 何を」→「誰に+何を」
・「奪う系」=「格変化」→「誰から+of 何を」→「誰から+何を」
ね!この4つが「相手に影響を及ぼす様な基本動作」を分類したものだと考えてはどうでしょうか。そして、どれも複雑だった格変化が単純化され、一番シンプルな第4文型になって行くわけです。どう?面白かった?!

Post a Comment

Your email is never published nor shared. Required fields are marked *
*
*