第3課 「時間の表し方」(10)「現在完了形」③
第3課「時間の表し方」の10回目です。前から「それがいつ起こるのか」を現在形に固定して、「それがどの様に起こるのか」の3つの表現の1つ、「現在完了形」について考えてます。
・完了用法(今終わった)
・継続用法(今までずっとやっていた)
・経験用法(今までにやったことがある)
さて、また同じ子からこんな質問がありました。これもとっても良い質問なので、これも講義に使わせてもらいます。
<質問>
先生、ありがとうございました。loveとknowが同じ状態動詞だと言うことが良く分かりました。あれから考えたのですが、liveも状態動詞ですよね。liveなら継続の「今まですっと住んでいる」も、経験の「今までに住んだことがある」も両方使えるんじゃないですか?そうすと、knowやloveは「継続」だけですが、liveは「継続」と「経験」の両方が使えることになります。それならliveとloveの違いはどこにあるのでしょうか?教えてください。
う~ん!!これは前よりさらにスルドい質問です!まとめると、こうなります。
⊿あたしは名古屋に今住んだ。(×)
⊿あたしは10年間ずっと名古屋に住んでいる。(◎)
I have lived in Nagoya for 10 years.
⊿あたしは今までに一度名古屋に住んだことがある。(?)
I have lived in Nagoya once.
マユちゃん!これは君の言うとおりで、loveとknowは自分の意志でコントロールすることができない「状態」です。でも、liveはそれとは違って、自分の意志で好きな場所に住むことができるわけです。つまり、自分の意志でその状態を生み出すことができます。そして、自分が意図的に生み出せる「状態」なら「経験」することができるわけです。
また、liveとloveの大きな違いは、進行形になるかどうかです。普通の状態動詞は、自分の意志でコントロール出来ない状態が勝手に継続するので、進行形になりません。「現在基本形」のままで「その状態が続いている」の意味になります。こんな具合です。
⊿あたしはあんたを愛している。
I love you.
⊿あたしはあんたのことを知っている。
I know you.
一方、自分の意志でコントロールできる行為や動作、つまり動作動詞は進行形になります。つまり、その行為や動作を意図的に継続させるときには「現在進行形」を使って「その行為や動作を続けている」の意味を表現します。こんな具合です。
⊿僕は今、グラウンドを走っている。
I am running in the athletic field.
⊿僕は今、『闇の守り人』という本を読んでいる。
I am reading Yami no mamoribito.
意味は同じ「している」なのに、状態動詞は「現在基本形」のまま、動作動詞は「現在進行形」を使ってそれを表現するわけです。ところで、liveはどうなのかというと、状態動詞のくせに進行形になるんですよ!こんな具合です。
⊿僕は今仕事で名古屋に住んでいます。
I am living in Nagoya on business.
参考書ではよくこれを「一時的な状態」だと説明します。でも、その一時的な状態を作り出しているのは本人の意志だということが大切です。参考書もそれを書かなきゃいけません。例えば、いつもはネクタイをしていない彼が、今日はネクタイをしている場合、こう言います。
⊿彼は今日に限ってネクタイをしているね。
He is wearing a tie today.
wearは、スキー服を「スキーウェアー(ski wear)」と言うときのwearで、「身につけている状態」を言うので、普通は進行形にはなりません。でも、いつもはネクタイをしない彼が、自分の意志でノーネクタイの習慣を破っているわけです。つまり、普段は意識なんかしていない状態を、強い意志で一時的に打破している様な場合に状態動詞が進行形になるわけです。そして、ここがポイントなのですが、wearもliveと同じで、その状態を自分の意志で生み出すことができるということです。
まとめておくと、「現在完了形」には次の3つの用法がありました。
・完了用法(今終わった)
・継続用法(今までずっとやっていた)
・経験用法(今までにやったことがある)
でも、状態動詞は自分の意志でその状態になるわけじゃないので、意図的にその状態を終わらせる(完了用法)ことはできないし、意図しない状態を経験する(経験用法)とは言いません。だから、loveやknowの様な状態動詞は現在完了にすると「今までずっとやっていた(継続用法)」の意味にしかなりません。そして、状態動詞は進行形になりません。進行形というのは、自分の意志でその動作を続けているという意味だからです。でも、状態動詞の中にはliveやwearの様に自分の意志でその状態を生み出せるものがあります。そのときに限って「今までにやったことがある(経験用法)」にも使えて、一時的な状態を進行形を使って表現することができます。
マユちゃん!これで分かりましたか?次回は動作動詞の「現在完了形」を考えます。あ、『闇の守り人』は上橋菜穂子氏が書いたファンタジーです。
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3 Comments
薮下先生お久しぶりです。以前質問させて頂いたgumと申します。
本日は下線部訳について相談で伺いました。
以前、筑波大学の英語の問題で、
「The number of ways you can talk about something determines the number of ways you can think about it を訳しなさい」というものがあったのですが、赤本の答えは、
「何通りの方法で物事について語れるかによって、
それについて何通りの考え方が出来るのかが決定される」となっていました。
これは、直訳で
「物事について話すときに用いることが出来る話し方の数が、それについて考えるときに用いることが出来る考え方の数を決定付ける」
と訳したら減点されますか?
また、減点されるなら、どのような時に意訳をして、どのような時に文法に沿って訳すと良いのかをアドバイスして頂けると嬉しいです。
長文失礼しました!
gum君!久しぶりです。君の質問はいつも高度で面白いですね。これは簡単に言うと、中学校の時にやった次の様な書き換えと同じです。
⊿この洗濯機の使い方
how to use this washing machine
⊿この洗濯機をどの様に使えば良いかということ
the way [how] we can use this washing machine
この2つは全く同じ内容ですが、表現の仕方が違います。同じように、筑波大の問題を書き換えるとこうなります。
⊿何通りの方法で事物について語れるかが、それについて何通りの考え方が出来るのかを決定する。
How many ways you can talk about something determines how many ways you can think about it.
ですから、赤本の訳もgum君の訳も同じ内容を別の表現で表してるわけです。当然、両方とも◎がもらえます。敢えて言うと、gum君の訳語の方が英文の構造に忠実だと言えます。
なるほど!いつも迅速な回答ありがとうございます。
これからも分からないことがある時は宜しくお願いしますね!
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