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マーカ抽出法講義(1)

やっと成績処理が終わったので、前に約束した通り新しい連載を始めようと思います。当初の予定では「やり直しの英文法」(仮題)をやろうと思っていたのですが、冬休みにやってもらおうと思っている『やぶゼミ』の中に出てくる内容一致問題の解法、「マーカ抽出法」を先に講義します。そうしないと、『やぶゼミ』の解説を読んでも意味が分からないからね!
あ、「マーカ」と言っても「ディスコース・マーカ(Discourse Marker)」のことではありません。英語のロジック(論理展開)を勉強するのに、ディスコース・マーカはとっても重要です。でも、模試や入試問題はどちらかというと「悪文」が多いので、ディスコース・マーカを覚えてもあまり役に立ちません。本当はディスコース・マーカがちゃんと役に立つ「良文」を出題して欲しいと思うのですが、国立大学の2次試験なんかはほとんどが「悪文」です。
これから講義する「マーカ抽出法」は、模試や入試には定番の「本文の内容と一致するものを下から選べ」という問題の解法です。この種の問題を「内容一致問題」と言うのですが、正解にたどりつくために一番大切なのは、その選択肢が本文の内容と一致するかどうかを判別するための根拠となる文(以下、根拠文)を速く正確に探し出すことです。そして、もちろん例外もあるのですが、根拠文は必ず本文中にあるということを覚えておいてくださいね。
さて、みんなは問題の本文の英語と、設問の英語のどっちが大切だと思いますか?当たり前のことですが、本文の英語が読めないと何が書いてあるのか分からないので、設問なんか答えられません。だから、本文の英語の方が大切だと思っている子が多いんじゃないでしょうかね。そして、普通は本文から先に読んで、設問はその後ということになります。でも、作問委員の先生が何らかの出題意図を持って作ったのは設問の英語の方で、本文の英語はどこかから引っ張ってきただけなのですから、設問の英語の方が圧倒的に大切なのですよ!
模試で思うように得点できない子に多い言い訳が、時間不足です。そんな子は大抵、根拠文を探すのに本文の英語を何度も読み返します。高校入試程度の英文なら400語前後の長さなので、何度か読み返しても大して時間はかかりません。でも、高校生になると、模試で600語前後、入試になると800語くらいの英文を読まなくてはなりません。そして、最近は特に情報処理能力を重視しているところがあるので、本文の英語はどんどん長くなってきています。こうなると、何度も読み返していたら時間が足りなくなるのは当たり前です。いや、2度読みをするともう時間が不足してきます。だから、設問の英語は短いので何度読み返してもかまいませんが、本文の英語は1度だけしか読まない!という覚悟が必要になってきます。
薮下が河合塾で「南山公開単科ゼミ」を担当していたときもそうでした。南山大は愛知県でトップレベルの私立大学で、英語が看板なので、どの学部でも長文が3つも出題されます。南山大で失敗する子はここで時間がかかりすぎてしまって、配点の高い次のC問題に手を付けるのがどうしても遅くなってしまいます。そこで薮下が考えたのが「マーカ抽出法」です。
じゃあ、どうやって長い本文の英語から根拠文を早く正確に探すのかというと、出題委員の先生の書いた設問の英語の「名詞」に注目するのです。そう、設問の選択肢の中に出てくる、その選択肢に特徴的な名詞を目印(marker)として抽出します。そして、目印となった名詞を探しながら本文の英語を読んでゆくのです。だから「マーカ(marker)抽出法」。そうすることによって、どこを重点的に力を入れて読めばよいのかが分かるので、本文を読むスピードが上がります。設問で問われていないところに時間や労力をかけても仕方がありませんからね。マーカが出てくるまではテンポ良く意味内容をナゾってゆくだけ。マーカが出てきたらスピードを落として根拠文を探します。そして、根拠文が見つかったら設問の選択肢の内容と一致するかどうかを判定すれば良いのです。
ビートたけし氏がその著書、『間抜けの構造』の中でとってもいいことを言ってます。彼は頭が良いですからね。いつも独特の視点から面白いことを教えてくれます。
「勉強できない」というやつは結局、「勉強の仕方が分からない」わけだろう。つまり、どこを重点的に勉強するか、その力の入れ方がわからない。英語でも数学でもなんでもそう。
「一生懸命勉強しているのだけれど成績が上がらない」と言うやつに、「どんな勉強しているの」と訊くと、たいていやり方が間違っている。そこに力を入れても意味ないだろう、というところに力を入れている。
『間抜けの構造』第五章「いかに相手の”間”を外すか」、力の入れ方より抜き方)
なぜ「名詞」なのか、名詞以外にはマーカにならないのか、マーカが出てこないときはどうすればよいのか、等々の有象無象は次回からゆっくり解説します。

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